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記事全文を読む→佐藤誠「取調室の裏側」〈匿名通信システムで犯罪を外注。警察が追うトクリュウの最深部〉
暴力団による旧来の経済活動は根底から変容しつつある。典型例が、前回で紹介した上野、羽田、香港で立て続けに発生した現金強奪事件だ。本来は反目するはずの組織の組員が利害一致のために協力する「犯罪のジョイントベンチャー(JV)化」が浮き彫りとなった。
組織犯罪が根本的変節を余儀なくされた背景には、「暴力団員は生きているだけで罪」とする暴排条例の浸透による弱体化だ。その隙間を埋めるように「半グレ」が跋扈した。組織は「受け子」「出し子」など実行犯を階層化し、配置する完全な分業制へと移行し、逮捕リスクを分散。こうして流動型犯罪グループの原型ができ上がると、あたかも「犯罪法人」のように犯行を重ねた。
デジタル技術を土台に、その仕組みを磨き上げたのが、SNSを通じて離合集散する匿名・流動型犯罪グループ、通称「トクリュウ」だ。連絡に秘匿性の高いアプリの使用を常態化。この「匿名通信システム」が連中の生命線となり、犯罪の構造を塗り替えた。
かつては「人」の絆が組織を形作っていたが、現代では「システム」が組織を構築し、犯罪を成立させている。トクリュウという呼称は、特殊な犯罪集団を想起させるが、実態は「犯罪の外注」にすぎない。「匿名通信システム」をプラットフォームとして持つ者が、顔の見えない誰かに犯罪を発注し、利益を吸い上げる。それが可能になった今、犯罪が「サービス産業化」しているのだ。
そこには切った張ったも、疑似家族を形成する盃もない。金という目的だけで「契約」を結び、仕事を実行するだけの無機質な「犯罪集合体」だ。警察が狙うのは駒である実行犯ではなく、「悪のインフラ」を構築し、犯罪JVを操り、犯罪を配給する者たちにほかならない。
首謀者は海外拠点にいるとよく言われているが、俺の読みは逆だ。極めて優れた「匿名通信システム」の秘匿性に絶対の自信を持ち、捕まるはずがないとたかを括っている。案外、国内で平然と暮らし、犯罪者の仮面をはがされることもなく、日常生活を送っているのではないだろうか。
そうした首謀者は、使い捨ての「闇バイト」を差配し、次なる犯罪を画策していると俺は見る。ここ数年、都内で相次ぐ不可解な強盗事件がその証左だ。23年の中央区銀座の高級腕時計店や、今年2月の新宿区四谷の貴金属店。白昼堂々と襲撃されたが、真の狙いは金品ではないはずだ。
街中を「実証実験」の場に利用して、警察が現場に駆けつける臨場時間、野次馬の反応、逃走の死角――収集したデータを分析し、アップデートしながらより洗練された犯罪パッケージとして、「外注」される。
「素人」でも実行可能な確実性の高い商品として売りさばかれれば、旧来の捜査手法では追いつけない。
佐藤誠(さとう・まこと)警視庁捜査一課殺人犯捜査第一係、通称「サツイチ」の元取調官。1983年、警視庁入庁。2004年に捜査一課に配属。『伝説の落とし屋』と呼ばれる。「木原事件」で木原誠二氏の妻・X子さんの取調べを担当。2022年に退官。
佐藤誠の相談室
https://satomakoto.jp/
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