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記事全文を読む→隣にポトリ…まるで飛ばない甲子園の「ジェット風船」は「飛ばすより苦情ゼロと回収率が大事」選手をイラ立たせる「破裂音」
4万2610人が詰めかけた甲子園球場の夜空に、黄色い風船が舞った。4月7日、阪神×ヤクルト戦。レギュラーシーズンでは2019年以来、7年ぶりに解禁されたラッキーセブンのジェット風船に、スタンドはどよめいた。ただし、そのどよめきの中身が問題である。歓声ではなく、困惑だった。
飛ばない。とにかく飛ばない。かつて浜風に乗ってナイター照明の向こうへ消えていったはずの黄色い放物線は、スタンドの頭上数メートルをフラフラ漂い、そのまま力なく真下に落ちた。
テレビ大阪のゲスト解説だった阪神・岡田彰布オーナー付顧問も、自分で飛ばした直後に、
「低いな。もっと上がってたよな。上がってないから、グラウンドにも落ちてない」
と驚きを隠さなかった。慣れないポンプで膨らませることにも手間取り「これ短いわ」と苦笑い。あの岡田顧問に「よーわからん」と言わせる風船とは、いったい何なのか。
Xには悲鳴に近い投稿が続々と上がる。
〈全然飛ばへん〉
〈名物死んだ〉
〈低空飛行すぎて隣のおっさんの頭に落ちた〉
〈あれはジェット風船やない。ただの風船や〉
怒りを通り越し、悲しみの域に達しているファンがいたほどだ。
佐藤輝明と才木浩人が不快感をあらわに
違和感は昨年秋の時点で、すでに確認されていた。9月28日の阪神×中日戦で行われた検証では、解説の関本賢太郎氏が「従来より飛距離が低い」と指摘していたのだ。球団側が「飛ばない」事実を把握していなかったとは考えにくい。
いや、飛ばないだけではない。グラウンドレベルにも影響が出ていた。試合後のお立ち台で、佐藤輝明はこう打ち明けた。
「想像以上にうるさいというか、割れる音がいっぱい聞こえたので、ちょっと気になった」
セ・リーグタイ記録の16奪三振を達成した才木浩人も、
「すごいパンパン割れている音が聞こえてるなあ、と思いながら投げていました」
風船がプレーの集中を削いでいたわけで、笑いごとでは済まされない。
一方で、メディア報道の温度感は、まるで別の世界の様相を呈していた。
「黄色の風船が夜空に舞い上がった」
「名物応援が復活」
藤川球児監督の「黄色がきれいで素晴らしい景色」というコメントが添えられ、美談として着地した。現場で落胆するファンと、テレビ映えする映像を撮って帰った報道陣の間には、埋めがたい温度差がある。
「飛ばない風船」設計は大成功だった!?
なぜ、こんなことになったのか。球団は再開にあたり飛沫対策、使用後の回収、再資源化、沿線住民の意見を重視したと公表している。甲子園球場は住宅地と学校に囲まれた立地だ。浜風に乗った風船が敷地外に飛べば住民の苦情は避けられず、回収できなければリサイクルの方針は破綻する。
つまり球団にとっての最適解は「飛びすぎない風船」だった可能性があるのだ。迫力ある演出より、苦情ゼロ。名物の復元より回収率。問題が起きないこと自体が指標になっていたとすれば、この「飛ばない風船」は、設計思想としては大成功ということになる。
球団は「ファンの要望に応えて名物を復活させた」と胸を張るだろう。だが、実態はまるで違う。700円(風船2本+ポンプ)と400円(追加4本)を払い、慣れないポンプを必死にシュコシュコやり、飛ばした風船があっさり隣の席に落ちる。しかもそのポンプ音と破裂音がプレー中のグラウンドにまで届いている。帰り道、ファンの口をついて出るのは感動ではなく「なんか違う…」だ。
復活したのはジェット風船ではない。苦情と衛生と回収率をクリアするために設計された、まったく別の演出だった。名前だけが当時のまま残っている。
(ケン高田)
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