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記事全文を読む→「世代論」で読むプロ野球〈ハンカチ世代〉(3)それぞれの「下り坂」が来る
けれど、どれほど豪華な世代にも、明暗はある。そもそもハンカチ世代という呼び名の中心にいた斎藤佑樹は、プロでは思うような結果を残せなかった。甲子園で社会現象になった投手が、プロで田中と同じ軌道を歩めなかったことは、この世代の物語に影を落としている。
ただ、それは単純な敗者の物語ではない。斎藤の存在があったからこそ、88年組は最初から全国区の物語として始まった。プロでの勝利数以上に、この世代に“始まりの映像”を与えた選手だった。
田中にも、前田にも、坂本にも、柳田にも、当然ながら下り坂は来た。田中は若い頃のように力でねじ伏せるだけの投球ではなくなった。前田は25年にタイガースでDFA(戦力外)となり、その後カブス傘下3Aを経てFAとなったのち、同年11月に楽天と契約合意。メジャーでの長い戦いを経て、日本で新しい章を開くことになった。
坂本もまた、永遠のショートではいられなかった。23年には遊撃から三塁へのコンバートが大きな話題となり、本人も三塁守備の距離感や打球の違いについて、
「難しい、打球がメチャクチャ。角度がついた打球が多いからさ」(「東スポ」1月4日)
と率直に難しさを語っている。その後も坂本は三塁手として出場している。これは衰えというより、チームの勝利に貢献したうえで、長く一軍で価値を出すための現実的な選択だった。
柳田の場合、最大の敵は自身のコンディションだった。あのフルスイングは美しい。だが、美しいものほど身体には負担がかかる。
「衰えてますよ。でも、打てます。技術は増してると思います」(「ナンバーWEB」25年12月9日)
と衰えを実感しながらもまだまだ一線でやれるメンタリティはある。
26年のホークス公式選手名鑑で、柳田が野球の目標として「怪我をしない」と答えているのは象徴的である。かつては「どこまで飛ばすか」「どれだけ走るか」が問いだった男が、30代後半では「どう出続けるか」を最大のテーマにしている。
この世代の明暗とは、成功者と失敗者を分ける話ではない。むしろ、同じ才能の中にある時間差の話だ。早く輝いた者、遅れて出てきた者、故障に泣いた者、海を渡った者、守備位置を変えた者。若い頃は全員が同じ“同級生”として並べられた。しかし30代後半になると、キャリアはそれぞれ別の顔を持ち始める。そこにこそ、この世代の深みがある。
ゴジキ:野球評論家・著作家。著書に「データで読む甲子園の怪物たち」(集英社新書)と「マネジメント術で読むプロ野球監督論」(光文社新書)ほか。7月16日に「システムで読む甲子園」(カンゼン)が発売予定。Yahoo! ニュース エキスパート。
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