社会
Posted on 2026年07月28日 11:30

岩手県「ドラム缶のクマ溺死」騒動の顛末「血を飛び散らせず、銃の跳弾による人的な負傷リスクを防ぐ」

2026年07月28日 11:30

 岩手県雫石町の住宅敷地内に設置されたドラム缶式のワナ。そんな「密室」の中で起きた「クマの溺死」というショッキングな事実に、賛否の声が渦巻いている。

 コトの起こりは7月15日、町内の住宅敷地内に設置されていたこのワナに、1頭のクマがかかっているのが見つかったことにある。
 柵で囲われたワナとは違い、ドラム缶式は捕獲されたクマの姿を目視で確認しづらい。しかもドラム缶という暗闇の中でいきり立ったクマが、扉を開けた途端に飛び出し、人に危害が加える危険性は高い。そんなことから、町では銃による駆除を断念。溺死させるという方法を選択した。

 地元記者が解説する。
「国の第13次鳥獣保護管理事業計画には、捕獲した有害鳥獣を駆除する際、できる限り苦痛を与えない方法で殺処分すると定められており、岩手県もこの指針に基づいて害獣を駆除しています。加えて、市町村がクマを駆除した際、本来であれば県に対し、捕獲票を提出しなければならないのですが、溺死の事実が公になる7月21日までに、町からは捕獲票が提出されていなかった。この日に県が町に事実を確認し、クマを溺死させた事実が判明したようです」

 岩手県は「管理事業計画に沿わない」として町に注意を促したが、獲得票の未提出は単純ミスだったのか、あるいはなんらかの意図があったのかはわからない。ただ、周辺住民たちの間には事件発覚後、「いったい誰が、この処理方法を外部に漏らしたのか」といった、疑心暗鬼の空気が流れたという。

「せめて苦しまないようにしてほしい」という綺麗ごと

 害獣駆除は事実上、赤字覚悟のボランティアによる、限られた予算と人手で行われる。自治体に用意された選択肢は限られているため、表向きの倫理観と現場の乖離が生じることがある。

「そんな中で『血を飛び散らせず、銃の跳弾による人的な負傷リスクを防ぐ』という安全確保を最優先しろ、と言われれば、『溺死』という選択肢が生まれたことはある意味、必然といえるでしょう。とはいえ、地元の人間しか知りえない事実を、あえてリークしたのは誰なのか。情報漏洩をめぐり、町民の間からは『組織の隠蔽体質や秘密主義に耐えかねた役場内の誰かが、SNSに事実をリークしたのではないか』と…」(前出・地元記者)

「クマが可哀想だ」「せめて苦しまないようにしてほしい」と声高に主張する人々の多くは、クマが出没しない安全な都市部で暮らしている。だが雫石の住民は子供たちの登下校の安全に怯え、玄関のドアを開けることにすら恐怖を感じる日常を生きている。
 熊は襲う時、人間の苦しみなど考えてくれない。綺麗ごとを並べるだけの世論と、生活を守るために手を汚さざるをえない現場の溝は深いのだ。

(灯倫太郎)

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