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記事全文を読む→アメリカから「ジャガイモ輸入解禁」に農家が大反対する「恐ろしいジャガイモ線虫」侵入後の「取り返しのつかない被害」
アメリカ・アイダホ州の一部地域では、畑の土を外へ持ち出さないよう、厳しい移動制限が敷かれている。農機具も土を完全に落とさなければ、「発生地域」の外へは出せない。そこまでして封じ込めている相手が、肉眼ではまず見えない「線虫」だ。名前は「ジャガイモシロシストセンチュウ」。
雌は死ぬと体がそのまま硬い殻に変わり、中に200~600個の卵を抱えた「シスト」と呼ばれるカプセルになる。アメリカ農務省の資料によると、このシストは土の中で最長30年間も眠り続け、中の卵は生きたまま残る。ジャガイモの根から出る物質に反応して幼虫が孵化し、根に取りついて養分を奪う。放置すれば収穫量を最大80%まで落とすという。
日本政府は現在、アメリカ産ジャガイモの輸入解禁に向けた手続きを進めているが、病害虫侵入の懸念から、国内生産者からは強い反発が起きている。やっかいな病害虫が一度、日本に侵入すれば、取り返しのつかない事態に発展する可能性があるからだ。
この線虫は、日米が管理方法を協議する病害虫21種の案に含まれている。アメリカは2020年、一般流通用の生鮮ジャガイモを日本で売れるよう輸入解禁を正式に求めた。現在、アメリカ産の生ジャガイモが日本に入れるのはポテトチップ加工用だけで、流通ルートは厳格に管理されている。農林水産省はリスク評価を進め、8月28日にその21種を公表した。9月18日にはオンラインで説明会を開く予定だ。ただし解禁が決まったわけではなく、協議はこれからが本番である。
やっかいなのは、この線虫がジャガイモの中身ではなく根に寄生することだ。シストはジャガイモの表面や農機具にくっついた土を介して広がっていく。しかもジャガイモだけでなく、トマト、ナス、ピーマンといったナス科の作物にも寄生する。もし入り込めば、被害はジャガイモ畑だけでは済まないのだ。
どこで土を落としてどう管理するのか
現在の加工用輸入は、病害虫を外へ出さない仕組みになっている。密閉コンテナで日本へ運び込み、指定の加工施設へ直行。加工で出たくずや残さは焼却か同等の方法で処分し、生産地での線虫の不発生確認やジャガイモからの土の除去も前提になっている。それでも輸入検査で線虫か土が見つかれば、その荷はまるごと廃棄あるいは返送。原因がわかるまで、次の便の検査は止まる。畑から工場まで、徹底した封じ込めである。
一般流通用が解禁された場合、どうなるか。加工施設への直行という前提が崩れ、ジャガイモは全国のスーパーや飲食店、家庭の台所へ届けられる。皮や泥が各地へ散らばらないよう、どこで土を落とし、どう管理するのか。加工用とは別の仕組みが必要になるが、具体的な検疫条件はまだ決まっておらず、農水省はこれからアメリカ側と詰めていく段階にある。
実はこの線虫の脅威は、すでに日本の農家を苦しめていた。2015年には北海道網走市で国内初の発生が確認され、翌年に始まった緊急防除が今現在も続いている。
それでも農水省が改めてリスク評価に踏み込むのは、今回の輸入解禁が国内農業への新たな打撃につながりかねないからだ。
食品の異物なら、洗い落とせばそこで終わる。だがこの線虫は土に紛れ込んだが最後、数十年にわたって畑で生き続ける可能性がある。一般流通を認めながら、どうやってその土を水際で食い止めるのか。答えはまだ示されていない。
(ケン高田)
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