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記事全文を読む→「世代論」で読むプロ野球〈松坂世代・続〉(4)球史に残る「戦う姿勢」の遺産
松坂世代が残した最大の遺産は、単なる成績ではない。もちろん、勝利数、本塁打数、セーブ数、奪三振数は素晴らしい。だが、それ以上に彼らが残したのは、「自分の役割から逃げない姿勢」だった。
松坂は怪物として、世代そのものを背負った。杉内は左腕の技術と感情を武器に、勝てる投手であり続けた。村田は主砲として、批判も期待も受け止めながら長打を狙った。藤川は短いイニングに魂を燃やし、ストレート一球で球場を支配した。和田は最後まで変化を受け入れ、40代になってもプロの先発として勝ち筋を探し続けた。
この「戦う姿勢」は、現代の野球にそのまま持ち込むべきものではない。球数管理、コンディション管理、分業制、データ活用が進んだ現在において、昔のように“無理”を美談にする必要はない。むしろ、彼らの時代の負荷や故障の歴史から学ぶべきことも多い。だが、それでも消してはいけないものがある。苦しい局面で、自分の名前で勝負を引き受ける感覚だ。
令和の野球は、より合理的になった。先発は早めに降り、リリーフは細かく分担され、打者もデータに基づいて役割を最適化される。それは正しい進化である。ただ、その中で時々、選手の顔が見えにくくなる瞬間もある。松坂世代には、その逆があった。良くも悪くも、選手個人の顔が濃かった。勝った時も負けた時も、「あいつの試合だった」と言える濃度があった。
彼らは最後の昭和的カリスマたちだった。だが、それは古いという意味ではない。自分の身体を削り、役割を背負い、時に壊れ、時に復活し、それでも人前に立ち続けた選手たちだったという意味である。松坂世代は、現役選手としては終わった。しかし、彼らが見せた「戦う姿勢」は、いまも野球を見る側の基準として残っている。
数字で語れば、いつか抜かれる記録もある。だが、姿勢は簡単には抜かれない。松坂が背負い、杉内が研ぎ澄まし、村田が振り抜き、藤川が叫ぶように投げ、和田が最後まで続けた─その連なりこそが、松坂世代の本当の遺産である。彼らは勝っただけではない。戦うとはどういうことかを、長い時間をかけて見せ続けた世代だった。
ゴジキ:野球評論家・著作家。「データで読む甲子園の怪物たち」(集英社新書)ほか著書多数。「マネジメント術で読むプロ野球監督論」(光文社新書)が重版出来。発売前から重版となった最新刊「システムで読む甲子園」(カンゼン)が絶賛発売中。Yahoo! ニュースエキスパート。
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