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Posted on 2026年09月05日 18:00

藪恵壹 36歳のメジャー挑戦は引退へのソフトランディング「毎日が旅行気分で野球人生に悔いが残らなかった」/プロ野球「俺が引退を決意した」瞬間

2026年09月05日 18:00

 藪恵壹(57)は1993年のドラフト1位で、阪神のユニホームに袖を通した。長らく先発投手の柱として低迷したチームを支え、引退を見据えた進路として選んだのはメジャーリーグだった。悔いなく現役生活を駆け抜けたかったのだ。

 大学、社会人を経て、プロ入りが決まったのは25歳と遅かったので、最初から「40歳まで現役で頑張ろう」と、目標を定めていました。

 星野監督時代の03年には先発ばかりか、中継ぎも経験して8勝を挙げ、リーグ優勝を味わえましたが、日本シリーズでは登板なし。当時はもう35歳でしたが、「メジャーに行く!」と決めて、翌年は家族の説得に始まり、代理人選定や情報収集などに時間を費やしました。すでに「引退」のことを考えていて、そこへ向けていかにソフトランディングしていくかを念頭にしていました。

 海外FA権を行使して渡米した、1年目の05年はアスレチックスでプレー。映画「マネーボール」の世界を体感し、バリー・ボンズ、サミー・ソーサ、ランディー・ジョンソンなど超一流選手との対戦も現実になりました。行く前から野球人生、価値観が変わると思っていましたが、まさに百聞は一見にしかず。NPBだけでは経験できなかったことは多く、毎日が旅行の気分でした。「あの時、行けたのに‥‥」と悔いを残すことなく、野球人生を終えられてよかった。

 通訳が3カ月でいなくなったため、独学で語学とパソコンのスキルを身につけました。契約書も自分で読み込んでサインしたんですよ。メジャーはとにかく契約社会で、カット(クビ)は日常茶飯事。最初は恐ろしく感じましたが、不思議なもので、段々と違和感なく受け入れていました。ただし、すべてはタイミングと縁です。契約先がない期間にメキシコのチームを紹介してくれたのは、阪神時代にチームメートだったディリク・ホワイト(現・楽天駐米スカウト)。当時は手数料も取れない立場だったのに、惜しみなく手を差し伸べてくれたのです。

 現役ラストシーズンにあたる10年も、本当は日本へ戻る気はありませんでした。ところが、シーズン中の7月にロッテの入団テストを受ける機会があり(最終的に不合格)、続けて阪神時代の通訳がフロント入りしていた楽天にも再チャレンジのチャンスをいただき、支配下を勝ち取りました。

 1軍では夏場に11試合投げましたが、最後は左右両方のふくらはぎを断裂。鍛えようがない箇所でしたし、オフにはチームの体制が刷新されることもわかっていました。

 そんな折、阪神のフロントと会食した際に「コーチで戻ってこないか」と誘われた。4年続いた単身赴任中、子供もどんどん成長している状況でした。家族にも負担をかけていたから、潔くユニホームを脱ぐ決断をしました。

 現役をもっとやれたのではないかという気持ちもありましたが、引退すること自体に悔いはなかった。それよりも、アメリカで勉強したこと、ブルペンでの肩の作り方やリリーフの使い方など、培った経験を早く活用したい気持ちが大きかったです。

 ソフトランディングを意識した理由は、他にもあります。近年は盛大な引退セレモニーで選手を送り出すことも増えましたが、私自身は、それがとても苦手で‥‥(笑)。大々的にアピールしてユニホームを脱げば、小さな子供がショックを受けるとも思いました。彼らにとっては野球選手以前に父親でもあるので、今後も家族として何ら変わらないことを示したかったのです。

 余談ですが、後悔していることもあります。在籍した球団のユニホームをすべて自宅に保管していますが、もっといろんな球団に属していればよかったなと。かつてメジャー時代の同僚から見聞きしたことを思い返し、つくづく思います。

 阪神ではコーチを3年させていただき、今はNPBとMLBの解説が仕事の軸です。でも、向こうで得た知見はまだ3割程度しか生かしきれていません。近い将来、球団数拡大の話もある中で、いい助っ人外国人選手が日本で気持ちよくプレーできるよう、私の経験を生かすことが今の夢ですね。

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