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記事全文を読む→世界でも日本でも…北朝鮮IT労働者が「身元偽装なりすまし面接」で企業に侵入する戦慄手口と「ミサイル資金稼ぎ」
「金正恩はデブで醜い豚だ、と言ってみてください」
オンライン採用面接を記録した映像で、面接官が応募者の男性に突然、こう求めた。男性は戸惑った表情を浮かべ「ちょっと分からなくて……」と繰り返す。結局、その言葉を口にしないまま男性側の映像が止まり、通信は途切れた。
なぜそんな質問をしたのか。面接官は、応募者が日本人になりすました北朝鮮のIT労働者ではないかと疑っていたのだ。この動画は偽装応募を見破った場面として、SNSで拡散した。
動画は珍しい面接風景として話題になったが、背景にある問題は深刻だ。7月31日、日本やアメリカ、韓国、イギリスなど11カ国が、北朝鮮IT労働者への共同注意喚起を公表した。さらに8月には、北朝鮮のIT労働者がアメリカ連邦政府機関で働いていたとして、FBIが調査していることも明らかになった。政府機関名や情報流出の有無は公表されていない。
各国が警戒するのは、身元を隠して仕事を得る手口だ。北朝鮮IT労働者は偽名や他人の身分証を使い、外国の技術者を装ってリモート求人に応募する。履歴書の作成や面接の受け答えにAIを使う例もある。現地の協力者が代わりに面接を受けたり、企業から届いたパソコンを自宅に並べ、北朝鮮IT労働者に遠隔操作させる「ラップトップファーム」と呼ばれる手口も確認されている。
こうした偽装応募は、少人数による散発的なものではない。米セキュリティー企業Nisosが6月に公表した調査によれば、北朝鮮系とされる22人のグループが、2024年12月から2025年9月までの間に16万6893件の求人へ応募し、2万1645件の面接を経て、少なくとも76件の内定を得ていた。1人あたり約7500件の応募をこなした計算だ。
社内システムに接続して機密情報や暗号資産を盗み出す
こうした北朝鮮IT労働者の関与は日本でも複数、確認されている。2022年、兵庫県の防災アプリ「ひょうご防災ネット」の改修業務に、北朝鮮のIT技術者が関わっていたことが発覚した。県がラジオ関西に委託し、複数の会社を経て技術者に発注されていたもので、県は実際の作業者を把握していなかった。
2025年4月には日本人男性2人が、運転免許証の画像と銀行口座情報を北朝鮮のIT労働者とみられる人物に提供したとして、書類送検されている。日本人名義があれば、クラウドソーシング上で国内の技術者を装いやすくなるのだ。
北朝鮮IT労働者が得た報酬の行き先も問題だ。各国政府は、その収入が核・弾道ミサイル開発の資金源になっていると警告している。さらに、採用された人物が社内システムに接続し、機密情報や暗号資産を盗み出す危険性が指摘されている。単なる不正就労ではなく、給料を受け取りながら企業の内部に入り込める点が脅威の本質だ。
採用する企業にとって厄介なのは、面接だけでは本人を見抜けないこと。画面に映る人物と、採用後にパソコンを操作する人物が同じとは限らない。偽名の履歴書や他人名義の身分証、銀行口座が使われ、面接に映る顔や声までAIで加工される時代。冒頭の質問は異様に聞こえるが、そんな手段に頼らなければなりすましを見抜けないほど、事態は深刻なのだ。
(ケン高田)
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