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記事全文を読む→【世界の最凶独裁者列伝】国境地帯の移民を全排除する「スペイン語の発音」判定…巻き舌音に失敗したらその場で惨殺
多くの独裁者は孤独ゆえに、猜疑心が強い。そのため少しでも自分に歯向かうものがあれば、容赦なく消し去る。そうさせない方法が、徹底した暴力と恐怖による支配だ。
カリブ海に浮かぶ美しい島国ドミニカ共和国で30年以上にわたり君臨したラファエル・トルヒーヨは、国民を血塗られた恐怖と絶望のドン底に叩き落とした冷徹な独裁者。その残虐性を語る上で外せないのが、1937年秋に勃発したハイチ系住民の大虐殺、通称「パセリの悲劇(ペレヒルの悲劇)」である。
ドミニカ共和国は同じ島(ヒスパニョーラ島)を共有するハイチとの間で長年、国境や移民をめぐる問題で摩擦を繰り返していた。国境地帯に暮らすハイチ系移民や、その子孫である黒人住民を「ドミニカ社会の純血を脅かす存在」「経済的、文化的侵略者」と考えたトルヒーヨは、国境付近の軍や民兵に対し、ハイチ系住民の徹底的な排除を命じる。この虐殺で用いられたのが、言葉(発音)による選別だった。
国境地帯の住民はスペイン語とハイチのクレオール語、またはフランス語が入り交じる形で使用していたが、トルヒーヨは疑わしいものには「ペレヒル(perejil/パセリのスペイン語)」という単語を発音させるよう命じた。
なぜなら、スペイン語を母語としないハイチ系移民は、この単語の「r」の巻き舌音をうまく発音できないからだ。うまく発音できない者はその場でハイチ系とみなし、惨殺してしまう。
殺害にあたっては銃弾の節約と銃声による発覚を防ぐため、「マチェテ」と呼ばれる大型のナタが用いられ、住民たちの遺体は国境沿いの川に無造作に捨てられた。
川は犠牲者の血で赤く染まり、その数は2万人から3万人に達したといわれる。この極めて曖昧な基準で、無数の命が機械的に刈り取られていったのである。
大勢の面前で罵倒して人格を踏みにじる「支配のマインドコントロール」
部下や高官たちを支配する手法も異常だった。トルヒーヨは日常的に彼らを大勢の面前で罵倒して人格をズタズタに踏みにじり、屈辱を味わわせることでプライドや自尊心を奪った。そして「生き残るためにはトルヒーヨの犬になるしかない」という極限のマインドコントロールを施したのである。
これは実の家族や親族ですら例外ではなかったというから、まさに国家まるごと、この男の嫉妬と猜疑心を癒やす道具と化していたわけだ。
この最凶独裁者が愛人宅に向かう途中、暗闇の中で反対派によって暗殺されたのは、1961年5月31日の夜。M1カービン銃やトンプソン・サブマシンガンで武装した襲撃グループは、トルヒーヨが乗る車に向けて一斉に銃弾を浴びせ、車内はまさに蜂の巣状態と化した。
なお、この計画は単なる一過性の暴動ではなく、アメリカCIAと国内外の反体制派による綿密な連携のもとに進められたことが、のちに判明している。
(山川敦司)
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