野田総理が12月16日に福島第一原発の「冷温停止状態」を宣言して1カ月。政府は事故の収束ムードを演出しようと躍起になっているが、そんな中でまた不気味な数値が公表された。
文部科学省発表の「定時降下物環境放射能測定結果」によると、新年早々の1月2日、福島市のセシウム134と137を合わせた降下量が、432メガベクレル/平方キロメートルに達したのだ。「数字だけを見れば、7月の水準に戻ってしまった」と語るのは、中部大学の武田邦彦教授。
「ただちに退避すべき数字ではありませんが、注意が必要になるレベルです。これは1平方メートルあたりに直すと、432ベクレル。仮にそこで育てていた野菜を全てとって1キロだとすると432ベクレルです。4月からの食品の規制値は100ベクレル/キロですが、その値は超えてしまいます。これは1月2日だけの話で、もしこの値が続けば、危険度はさらに増します」
震災から10カ月がたっても、収束と言うには程遠い実情と言えよう。ではこのセシウムはどこから来ているのだろうか。政府発表どおり、原発が「冷温停止状態」であれば、こんな数値にはならないと思うのだが‥‥。武田教授がさらに続ける。
「新たな核分裂反応が起きているのがいちばん怖いですが、放射性ヨウ素が検出されていないので、それはなさそうです。私は最初、一度放出されたセシウムが風で巻き上げられて、それらを検知したのだと思ったのですが、1月2日の風は原発から福島市方面には吹いていなかったから、これも違う。気にすべきは3・11の事故で発生したセシウムが何らかの作用で新たに放出されたという可能性。あの時に作られたものが原子炉建屋内にたまっていて、それが出てきたとすれば、これはやっかいですね」
今回のセシウム急増をいち早くキャッチした武田教授は、ブログで福島周辺に暮らす人たちへ警戒を促している。とるべき対策としては、外出は少し控える、外へ出るならマスクをする、帰宅時には服をはたくなどである。
さらに、放射線の人体に与える影響はまだわからない部分も多いとしながらも、武田教授はこう語る。
「対策も何もせずに、放射線の高い地域で暮らし続ければ、最悪の場合、ガン、知能障害、免疫不全、心筋梗塞、白血病などになる危険性が高まることもある」
今現在、放射線の人体への影響がはっきりしないのであれば、無用な被曝は避けねばなるまい。
「政府、東電は、とりあえず今回のような値が出たら心配すべきだと思うんです。何も大騒ぎしろと言っているわけじゃない。事故から10カ月たって、この数字が出たんですよ。詳細なデータを出して、国民に呼びかけるぐらいはしていただきたいッ!」(武田教授)
この声は霞ヶ関へは届くだろうか‥‥。
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