社会

重大病が見つかるチェックリスト「大腸がん」

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 国立がんセンターによると、2015年のがん罹患数は98万例、死亡数は37万人と予測されています。2014年と比較すると、罹患数が約10万例増加に対し、死亡数は約4000人増加。罹患数はかなり増えていますが、死亡数には大きな変化はないものと解釈できます。

 がん全体の罹患数が増えたのは、高齢者の数が増えるに伴って、細胞のがん化が多く起こってきたから。あるいは、がん検診を受ける人が若干ですが増えつつあり、がんが見つかる人が多くなったから、だと私は考えています。これに対し、がん全体の死亡数にあまり変化がないのは、早期発見・早期治療ができるようになりつつあるからでしょうね。

 部位別罹患数を見てみると、全体では「大腸がん」の順位が上がりました。大腸、肺、胃、前立腺、乳房の順に罹患数は多くなっています。部位別死亡数でも、1位は肺がんですが、大腸がんも増加中です。今年5月に亡くなった今井雅之さんも大腸がんでした。

 ということで、今回は「大腸がん」を取り上げたいと思います。

 大腸がんの罹患数が増えたのは、何といっても“食生活の欧米化”。動物性タンパク質や脂肪の過剰摂取と食物繊維の欠乏が罹患数増加につながっています。また、大腸がん検診のあり方にも関係しています。便潜血反応などの検査を受ける人は増えているのですが、それが陽性でも、大腸内視鏡検査を受けない人がかなりいることが問題です。他の検査に比べて、恥ずかしい、多少の痛みがある、などといったことが原因のようですが、今は「仮想大腸内視鏡検査」といって、CT画像を構築し、あたかも内視鏡検査を受けたかのような画像が得られる新しい検査法もあります。便潜血反応で陽性と出たら、必ず何らかの大腸がん精密検査を受けましょう。大腸がんの検診率は増加しつつありますが、欧米と比べたらまだまだ低いのが現状です。

 では、チェック項目(ページ下部)を見てみましょう。

 【1】50歳を超えると、がんは急激に増加します。初期のがんは症状がないのが特徴ですが、最近は検診や人間ドックなどで、何の症状もなくがんが見つかることも多いです。一般的には、症状が出てから見つかるがんよりも、症状がないうちにたまたま検診などで見つかるがんのほうが進行していない場合が多く、完全に治すことができる可能性も高まります。ですから50歳を過ぎたら症状がなくても検診は必ず受けましょう。

 【2】運動不足が大腸がんのリスクを増加させます。米国国立がん研究所によると、運動は大腸がんの危険度を平均40~50%減らすと関連づけています。

 【3】は意外に思うかもしれませんね。一般的に推奨される睡眠時間は7時間ですが、9時間以上寝ている、つまり寝すぎの人は、大腸がんのリスクが最大2倍以上も高くなります。寝すぎる人は、質の低い睡眠だからと考えられています。特に【4】のいびきをかく人は、体に行き渡る酸素が少なくなるため、がんの発生率が高くなるのではないかとも言われています。

 【5】1日6時間デスクワークをする人は、体を動かす仕事をしてきた人に比べて、大腸がんになるリスクは2倍になります。なぜなら、極端に運動量が少ないためです。複数の研究で、運動不足が大腸がんの発生率を高めることがわかっています。

 【6】~【8】が先ほども申し上げた食生活の欧米化ですね。動物性タンパク質と動物性脂肪のとりすぎ、そして植物性繊維の摂取不足。これらが大腸がんの危険因子であることを肝に銘じてください。ただし、ハーバード大学のグループが各国の約53万人の男女を対象に行った研究によると、1日に牛乳を250グラム飲む人は、70グラム未満しか飲まない人に比べて、大腸がんのリスクが下がったといいます。乳製品の中でも牛乳はいいようです。

 【9】【10】について、トリビア情報を一つ。「多目的コホート研究」の発表によると、平成2年と平成5年に40~69歳の男女約9万人を対象に行ったアンケート調査で、男性ではBMIが21-29の人のがん発生率はほぼ同じでしたが、21未満の痩せている人と、30以上の非常に太っている人で、発生率が高くなる傾向が見られました。特に、非常に痩せている人の発生率の増加は顕著で、BMIが19未満の人は約30%も発生率が高くなっています。肥満ががんになりやすいのはわかりますが、痩せすぎにも注意しなければならない、ということでしょうね。

 対策としては、症状がなくても定期的に検診を受けることです。会社勤務の方々は、検診を受ける機会も多いでしょうが、自営業や、定年退職後の方々は、誕生日に検診を受けるとか、何かの決めごとをしておいたほうがいいかと思います。専業主婦を持つ男性諸氏も、ぜひとも、奥様に検診を勧めてください。

 そして運動。定期的な運動を続けることで、がんの成因の一つである活性酸素から身を守る働きが高まることが知られています。さらに、継続的な運動ががんの発生、増殖を抑制する免疫機能を高めるとの報告もあります。具体的には週2~3回、1回に30分以上、体全体に汗がにじむ程度で体を動かすとよいでしょう。歩行やジョギングなど、いつでもどこでもできる運動がおすすめです。ただし、激しすぎる運動は関節障害や心臓疾患の原因になりやすく、免疫力が逆に下がる場合もあるので、ニコニコと続けられる程度の運動を心がけましょう。

 食事については、動物性タンパク質や動物性脂肪をなるべく控え、植物性繊維を積極的にとることが重要。ちなみに、カレーに含まれているターメリック(クルクミン)が、大腸がんの発症を予防する可能性があるという研究結果があります。また、1日3杯以上のコーヒーを飲むと、大腸がんの発症リスクが3割低くなる、という人もいます。コーヒーを飲むことで腸内が活性化し、がんを促進させる胆汁酸や中性脂肪などの濃度が抑えられるから、ということです。カレーとコーヒーが好きな人には朗報かもしれませんね。

──大腸がんチェック項目──

【1】50歳以上である

【2】日頃、運動をあまりしていない

【3】9時間以上寝ることが多い

【4】よくいびきをかく

【5】デスクワーク中心を毎日6時間以上している

【6】ハムやサラミなどの加工肉をよく食べる

【7】牛肉、豚肉などの肉類、動物性脂肪が多い食べ物が好きでよく食べる

【8】緑黄色野菜が嫌いであまり食べない

【9】BMI(体重÷身長÷身長)が21未満の痩せすぎである

【10】BMIが30以上の肥満である

※3個以上当てはまれば経過観察。5個以上当てはまる人は、なるべく早めにがん検診を受けましょう

◆監修 森田豊(もりた・ゆたか) 医師・医療ジャーナリスト・医学博士。レギュラー番組「バイキング」(フジテレビ系)など多数。ドラマ「ドクターX~外科医・大門未知子~」の医療監修も務めた。

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