渡辺氏はさらに警鐘を鳴らす。
「阪神高速が阪神・淡路大震災で倒壊した時、一部には手抜き工事を疑う声もあった。それでなくても、首都高は長年にわたる酷使で経年劣化が進行し、建設年次の古い路線などはまさに重症。路盤を張り替えるため、アスファルトを引き剝がしてみたら、下のコンクリートがボロボロの状態だった――そんなこともあったと聞いている。
絆創膏を貼ってその場を凌ぐ応急措置は、もはや限界に来ていると見ていいでしょう」
首都高のウェブサイト内にあるドライバーズサイトには、「大地震が発生したら」と題し、
〈停車するときは左側か右側に寄せ、緊急車両用に中央部を開けてください〉
〈二次災害防止ため、自分の判断でむやみに行動しないでください〉
などと書かれている。しかし、首都高そのものが崩壊してしまえば、「停車するときは」も「二次災害防止のため」も何もない。こんな注意書きにむなしさを覚えるのは、恐らく筆者だけではないだろう。
誰しも恐怖を覚える一連の疑念に対して、首都高広報室は、
「阪神・淡路大震災以後、当社は必要な補強工事を着実に進めてきました」
と実績をアピールする一方、例の「生コンに廃材」の一件については、困惑気味にこう答えた。
「当時も施工段階での立ち会い検査は行われたはずです。そんな話は聞いたことがなく、コメントのしようがありません」
しかし、建物にせよ道路にせよ橋にせよ、関係者の間で高度成長期の「粗製乱造」が問題視されてきたのもまた事実。そんな中、首都高速道路株式会社では今、社内に調査研究委員会を立ち上げ、首都高の大規模更新のあり方について、検討が進められている。
今後も絆創膏による応急措置を続けていくのか、それとも建設年次の古い路線を造り直すのか。国交省をはじめとする関係各機関との議論は始まったばかりだが、首都高広報室にこの一件についての見解を尋ねてみると、
「当社としては、造り直す方向で考えていきたい」
はからずも、こんなホンネが返ってきたのだ。
「いまさら60年代の粗製乱造の責任を追及してみたところで意味はない。問題を一気に解決するには造り直しがベストだが、その場合は建設費用の一部を通行料金に転嫁せざるをえない。安全を取るか、経済を取るか、悩ましい問題だ」(前出・旧建設省OB)
老朽化した路線の安全性は「待ったなし」の状況にある。
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