社会
Posted on 2016年07月15日 05:55

秋津壽男“どっち?”の健康学「住環境の変化で脱水症状に注意。ペットボトルを手の届く範囲に」

2016年07月15日 05:55

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 長期予報によれば、今年の夏は全国的に猛暑となるそうです。先週は水分補給についてお話ししましたが、こういう質問を受けることがあります。

 運動したあとの水分補給は「ミネラルウオーター」と「スポーツ飲料」のどちらがより適しているでしょうか?

 夏になるとダイエットや行動がアクティブになり、運動を始める方が多くいます。夏は他の季節に比べ多量の汗をかきますが、汗には水分だけでなく塩分も一緒に排出されています。つまり、水とともに塩分(塩化ナトリウム)を補給するのが理想的で、塩分を含まないミネラルウオーターよりも、塩分を含んだスポーツ飲料のほうが、体力の回復に適していると言えます。

 もちろん「水+塩」という組み合わせであれば、必ずしもスポーツ飲料にこだわる必要はありません。もしスポーツ飲料がすぐに手に入らなければ、ミネラルウオーターなどの水分と同時に塩アメや梅干し、塩こんぶなどの塩分補給でも十分かと思います。

 さらに言えば、夏は運動時もさることながら、年齢を重ねるほど、室内での熱中症対策に気を配るべきでしょう。その大きな要因は住環境の変化です。かつて、私たちが子供だった頃、日本の家屋は、窓を開け放てば、縁側から涼しい風が入ってきたため、夏は扇風機だけで過ごせました。そうした世代にとって「夏を乗り切るには扇風機で十分」という認識がいまだに根強くあります。その結果、思いもよらぬ脱水症状に見舞われるケースが増えているのです。

 特にマンションなどの機密性の高い集合住宅などでは、昔と異なり、窓を閉めきって扇風機の風に頼ったとしても室内の熱風が循環するだけで、室内の温度は高くなったままとなり、かえって危険です。本来ならエアコンを適切に使っていればいいのですが、いまだに「縁側打ち水」のイメージを持つ世代は、エアコンは贅沢とばかりに、うちわや扇風機で乗り切ろうとしがち。これは命に関わります。

 よく「熱中症になったなと思ったら水道の蛇口まで歩いていって水分補給すればいいじゃないか」という声もありますが、若者と違って、老人は体力が衰えているので、少しの脱水で動けなくなるため、室内でも、手の届く範囲にペットボトルを置いておくことが肝心です。旅先の旅館で枕元に水が置いてあるのは、実に理にかなったことと言えます。

 夏になると、両親が車の中に赤ちゃんを置き去りにしてパチンコに興じたあげく、脱水症状で亡くなる事故が時々聞かれますが、真夏の機密性の高いマンションは環境的に大差ありません。さらに言えば、真夏の炎天下での草野球などは、現代では危険な行為に等しいと言えます。

 日本の夏における平均気温を調べると、100年前より1度以上上がっています。たかが1度、と思われるかもしれませんが、猛暑もあれば冷夏もある中での「平均気温」、という事実を忘れてはなりません。株価チャートのように小さな上下を繰り返しながら右肩上がりになっており、90年以降、上昇度がいっそう高まっています。

 高温多湿な状況が続くと、人間の体は必要以上のエネルギーを消費させられますが、その限界を超えた形が夏バテです。

 木造の家で障子を開け閉めしながらうちわで過ごしていたのが、鉄筋コンクリート、アルミサッシ、エアコンと変化しました。私たちも先入観にとらわれず、時代の変化に合わせた熱中症対策を心がけましょう。

■プロフィール 秋津壽男(あきつ・としお) 1954年和歌山県生まれ。大阪大学工学部を卒業後、再び大学受験をして和歌山県立医科大学医学部に入学。卒業後、循環器内科に入局し、心臓カテーテル、ドップラー心エコーなどを学ぶ。その後、品川区戸越に秋津医院を開業。

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