エンタメ
Posted on 2012年06月29日 11:00

死んでも「アイツ」に勝ちたかった④ 松野明美(1)

2012年06月29日 11:00

 92年、バルセロナ五輪を前にして、日本中が女子マラソンの最後の代表枠を争った2人のランナーに注目していた。陸連側の曖昧な選考基準に翻弄され、その後の競技人生は、まさに明暗を分けた2人。「私だったら金メダルを獲れた」と、今もきっぱりと語る松野明美が、当時の舞台裏から宿敵・有森裕子との18年ぶりの再会秘話までを語り尽した。

自分より遅い人が選ばれた

 バルセロナオリンピックの女子マラソン中継の日、私はボロボロと涙を流しながらテレビの前にいましたね。レースを観ているようで観ていないという感じで、ただただ「私がこのコースを走っていたら‥‥」と、そればかりでした。

 有森さんが(ロシアの)エゴロワさんとデッドヒートを繰り広げている時だって、「私なら絶対に抜かれない」と思ってましたよ。つい手を固く握りしめてしまい、何度も手のひらの汗をぬぐったことを、今もはっきりと覚えてます。

 有森さんが銀メダルを獲得した時、私の中に込み上げてきたのは「おめでとう」ではなく、「悔しい!」という思いでした。私なら金メダルだったと、今でも言えます。勝負師であれば、当然の感情だと思います。

 92年8月1日。あの日、バルセロナ五輪の選考に漏れた松野明美( 44 )は、次の大会に備えて、北海道で合宿中だった。ライバル・有森裕子(45)が日本女子陸上競技界において64年ぶりのメダリストに輝き、スポットライトを浴びていた。その光景を目の当たりにし、松野の心と体は、想像以上のダメージを受けたという。

 現役時代、初めての体験でしたね。体は正直だった。ほんの5分間さえも走れないほどの状態が2カ月間も続いたんです。走り始めても、こんなに苦しい練習をして、ちゃんと結果も出してきたのに実らない‥‥と思うと、涙が出てきて(体が)止まってしまう。「私は何で選ばれなかったんだろう」と、報われなかった思いが募るというか、むなしいというか‥‥。

 直接対決すれば、絶対に負けない自信がありました。なぜ、私よりもベストタイムの悪い人が選ばれたのか、今でもわからない。「有森さんはズルイよ」という気持ちが消えませんでした。

 今もなお、松野の心に残る選考基準の不明瞭さ。当時、3人の代表枠のうち山下佐知子が91年世界陸上東京大会で準優勝し、内定。同じ大会で4位だった有森や前回ソウル五輪の1万㍍代表だった松野ら有力候補が、残り2枠を争う展開だった。2人は92年1月の国内選考レース「大阪国際マラソン」に照準を合わせていたが、有森が左足のケガで欠場し、直接対決は実現しなかった。この大会で松野は、優勝こそ小鴨由水に譲るも、当時の日本記録を更新。有森のベストを59秒も上回り、一躍、代表候補に名乗りを上げていた。一方の有森は、最後の選考レース「名古屋国際マラソン」を回避しつつ、出身地のローカル大会「おかやま県民健康マラソン」で自己新をマークして、好調をアピール。五輪本番を見据え、暑さと坂道に強い有森を推す声が高まり、山下と小鴨に続く残り1席は混迷を極めた。

 私はスポーツなのだから正々堂々と決めたかったんです。大阪で2位だった時、選考されるか微妙なら3月の名古屋も出場するつもりでした。でも、監督や周囲が「大丈夫だよ」と言うので、それなら体を休め、名古屋でエネルギーを使うより練習に充てようと思ってました。

 ところが、有森さんは名古屋を回避し、フルマラソンではないローカル大会に出場してアピール。それってズルくないですか。あんなにゴタゴタするならオープン参加で一緒に走りたかったですよ。監督に直訴しても出たかった。

カテゴリー:
タグ:
関連記事
SPECIAL
  • アサ芸チョイス

  • アサ芸チョイス
    芸能
    2026年11月02日 15:30

    脳梗塞で療養中だった伊達みきお(サンドウィッチマン)が、10月31日の「サンドウィッチマンザ・ラジオショーサタデー」(ニッポン放送)で、2カ月ぶりに復帰した。「さあ、時刻はお昼の1時を回りました。こんにちは。サンドウィッチマンの伊達みきおで...

    記事全文を読む→
    芸能
    2026年11月04日 13:00

    泉ピン子が訴えられた。映画製作会社「HumanPictures」が11月3日、所属監督の映画「AYUMI」と「養父」に出演したピン子に対し、損害賠償を求め2日付で東京地裁に提訴したと、公式Xで公表したのだ。問題が発生したのは、10月23日に...

    記事全文を読む→
    カテゴリー:
    タグ:
    芸能
    2026年11月05日 17:00

    毎日のように見聞きする「不正アクセスによる情報漏洩」のニュース。もはや情報漏洩していない企業のほうが珍しいんじゃないのってくらいだし、それどころか官公庁にまで被害は及んでいる。三菱UFJフィナンシャル・グループが、2027年3月までの開業を...

    記事全文を読む→
    カテゴリー:
    タグ:
    注目キーワード

    人気記事

    1. 1
    2. 2
    3. 3
    4. 4
    5. 5
    6. 6
    7. 7
    8. 8
    9. 9
    10. 10
    最新号 / アサヒ芸能関連リンク
    アサヒ芸能カバー画像
    週刊アサヒ芸能
    2026/10/27発売
    ■650円(税込)
    アーカイブ
    アサ芸プラス twitterへリンク