スポーツ
Posted on 2016年08月20日 09:59

夏の甲子園でスターになれなかった男たち(16)西武・田辺監督の脳裏に今もよぎる箕島戦の悪夢

2016年08月20日 09:59

20160820tanabe-2

 15年からは古巣・西武の監督に就任した田辺徳雄は、吉田(山梨)時代に1度だけ甲子園に出場したことがある。2年生ながら3番・ショートでチームの主力を担っていた83年夏の選手権だ。そしてこの大会での初戦・箕島(和歌山)との試合が田辺を西武ライオンズ黄金期の名ショートたらしめるきっかけの一戦となるのである。

 名将・尾藤公監督に率いられたこの年の箕島はエース・吉井理人(元・ヤクルトなど)を擁し、堂々の優勝候補の一角だった。当然、戦前の予想は箕島の圧倒的優位。ところがフタを開ければ9回表を終わって2-1と吉田がリードする予想外の展開を迎えていた。

 それでも、ただでは終わらないのが甲子園の強豪・箕島だった。土壇場9回裏に1死三塁と一打同点のチャンスを作ったのである。迎える打者は前の打席にソロ本塁打を放っている5番・硯昌己。この硯に対して箕島ベンチはスクイズを指示するが、そのサインを察知した吉田バッテリーがウエストし、三塁ランナーは憤死。吉田は勝利まであとアウト一つと迫った。だが、勝利を確信するナインをよそに田辺だけはこう思っていたという。「あの箕島のことだ、必ず何かある」。実は箕島はあの星稜との延長18回以外にも甲子園では数々の奇跡を起こして勝利してきた。そのイメージが残っていたのだ。そしてその不安は不幸にも的中する。直後に箕島の硯にセンターバックスクリーンへの同点弾を浴びてしまったのだ。こうして試合は延長戦に突入するのだが、それでも吉田は13回表に吉井を攻めて1点を勝ち越し。今度こそ勝利かと思われたのだが‥‥。

 その裏、再び箕島は反撃に転じ、吉田は1死満塁のピンチに追い込まれた。だが、ここで箕島の次打者が打った打球はショート・田辺の正面へ。おあつらえ向きの併殺で試合終了と思われたが、なんと胸で弾いてしまった。

 こうなると試合はもう箕島のもの。最後はレフト前へ打たれ、健闘虚しく吉田はサヨナラ負けを喫したのである。

 田辺に後悔があるとすれば、それは9回裏二死走者なしの時点でひと呼吸入れ、マウンドの投手に一声かけてやらなかったこと。そして最後のショートゴロだ。中途半端なゴロで本塁送球か、併殺かの判断が一瞬、鈍ってしまったのだ。プロ入りしたのち、最終回2アウトからピンチを迎えると、田辺の脳裏にはいつもこの箕島戦が去来したという。

(高校野球評論家・上杉純也)

カテゴリー:
タグ:
関連記事
SPECIAL
  • アサ芸チョイス

  • アサ芸チョイス
    芸能
    2022年07月05日 17:58

    可愛さ余って憎さ百倍。いやはや、この2人のバトルは本当にすさまじかった。沢口靖子が主演したNHK連続テレビ小説「澪つくし」や、渡辺謙主演の大河ドラマ「独眼竜正宗」の脚本を手掛け、飛ぶ鳥を落とす勢いだった脚本家のジェームス三木氏。ところが19...

    記事全文を読む→
    芸能
    2026年07月31日 06:45

    堺雅人主演ドラマ「VIVANT」(TBS系)が3年ぶりの続編でも、圧倒的な存在感を放っている。第2シーズンの初回放送は、平均世帯視聴率18.8%(ビデオリサーチ調べ・関東地区)を記録。放送中にはXで世界トレンド1位になった。前作は2023年...

    記事全文を読む→
    カテゴリー:
    タグ:
    芸能
    2026年08月06日 17:00

    2024年7月に停車中のロケバス内で共演者の女性に性的暴行をしたとして、不同意性交と不同意わいせつの罪に問われたのは、元お笑いトリオ「ジャングルポケット」の斉藤慎二被告だ。その第6回公判が8月5日に東京地裁で開かれ、検察側は懲役7年を求刑。...

    記事全文を読む→
    注目キーワード
    最新号 / アサヒ芸能関連リンク
    アサヒ芸能カバー画像
    週刊アサヒ芸能
    2026/8/4発売
    ■690円(税込)
    アーカイブ
    アサ芸プラス twitterへリンク