社会

秋津壽男“どっち?”の健康学「尿で気になる『回数』と『時間』の問題。突然の頻尿は糖尿病の可能性もあり」

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 先日、新年会で50代になる知人2人が「尿」についての悩みを意見交換していました。1人は「最近回数が増えた」、もう1人は「夜中に尿意で目が覚める」と心配していましたが、頻尿と夜間尿はどちらがより深刻な症状と言えるでしょうか。

 就寝時に催す尿の原因としては、利尿作用のある飲酒と前立腺肥大があげられます。男性の場合、加齢とともに生殖能力が衰えていき前立腺が肥大します。50歳を過ぎれば、程度の差こそあれ誰でも前立腺肥大が進行しますが、治療が必要な症状は4人に1人ぐらいです。

 つまり、深夜の尿意の要因はほとんどが「年齢」と「酒」から来るもので、いずれも大病ではありません。おしっこのたびに寝られなくなり、睡眠不足を招く場合ならやっかいですが、排尿後もすぐに寝られるのであれば、1晩に2回程度の夜間尿は許容範囲です。恐らく酒を飲まない夜はしたくなくなるはずです。

 成人男性の排尿回数は日中に5回前後、夜中に1回が平均的です。回数が多くとも普通の量なら問題はありませんが、1日に10回前後トイレに行きたくなり、加えて1回の量が少ない、というケースが頻尿です。

 頻尿の原因としては前立腺肥大や膀胱炎(女性に多い)のほか、ストレス(心因性排尿)があげられます。男性の場合、ある程度年齢を重ねるとホルモンバランスが崩れ、結果として前立腺肥大が引き起こされますが、前述のとおり、前立腺肥大は「誰でも通る道」。今は治療方法も確立されています。

 そのほか「おしっこが作られすぎている」、あるいは「膀胱が狭くなっておしっこをためられない」という要因もありますが、頻尿でいちばん怖いのは、尿に含まれる糖分が出ていく「糖尿病」です。

 両者を比べると、糖尿病という大病の可能性がある分、頻尿のほうが心配です。

 もう一つ、加齢とともに気になるのが前立腺肥大の初期症状でもある残尿感ですが、こちらは頻尿とは別モノです。頻尿はおしっこの回数が多くなりますが、残尿感は尿道が緩んだ結果、中におしっこが残る症状です。ホースで水をまいた時、蛇口を閉めて残ったしずくが出てくるのと同じで、残った尿が膀胱に残っているだけのこと。医学用語では「排尿後滴下」と言います。

 ズボンのチャックを上げた際にチロチロと出てくるのが気がかり、という人も多いようですが、その場合、排尿後に尿道をしぼってください。ペニスを振るのではなく、蟻の門渡りからペニスの間を、ホースの水を押し出すようにしぼる(=ミルキング)と、残った尿が出てきます。あるいは排尿後に爪先立ちをすると括約筋がキュッと絞められ残尿が出てきます。また、排尿の際にチャックを開けるだけでなく、ズボンとパンツを完全に下ろすと尿道の圧迫もなくなりますので、座って用を足すようにするといいでしょう。

 残尿感は病気ではありませんので、さほど気にすることはありません。お酒好きの人は、アルコールを控えると感じなくなることもあります。ただし、残尿感に加えて痛みがある場合は膀胱炎が疑われます。こちらは女性に多い症状ですが、病院に通って規則正しい生活をすれば治ります。

 尿は色も重要です。血尿は当然として、紅茶のようにオレンジがかっていれば肝臓の病気が、真っ黒だと腎臓が、白く濁っていれば膀胱炎が疑われます。洋式トイレを使った際に、尿の色を見る習慣をつけてください。また、排尿後に泡立つと蛋白尿と言われますが、排尿時の勢いによることが多いので、30秒ほど待って判断してください。

■プロフィール 秋津壽男(あきつ・としお) 1954年和歌山県生まれ。大阪大学工学部を卒業後、再び大学受験をして和歌山県立医科大学医学部に入学。卒業後、循環器内科に入局し、心臓カテーテル、ドップラー心エコーなどを学ぶ。その後、品川区戸越に秋津医院を開業。

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