政治

「都政の生き字引」が回顧する歴代知事の“実力”と小池百合子への提言

 都職員らに「愛読」されていた都政専門誌が、48年6カ月の歴史に幕を閉じた。「半世紀」にわたり取材を続けてきた「都政の生き字引」が回顧する歴代知事の“実力”とは──。

 昨年7月末に就任して以来、小池百合子都知事(64)の言動がワイドショーをにぎわす中、異色の専門月刊誌「都政研究」が3月号で廃刊となった。1968年に創刊され、都庁幹部のインタビューや行政の専門家による論考などを掲載。最盛期の発行部数は1万部を超えていた。発行人で記者も務める大塚英雄氏(82)が、小池氏の印象をこう語る。

「ひと言で言えば、運がよくてカンもいい人。豊洲市場への移転問題では延期を宣言したあと、土壌汚染対策の『盛り土』をしていなかったことが発覚して追い風になりました。都の財政状況がよかったのもラッキーでしたね。歴代都知事の鈴木俊一氏(故人)、青島幸男氏(故人)、石原慎太郎氏(84)は、美濃部亮吉氏(故人)が都知事時代に職員の数を増やすなど、財政悪化の状態が続き、財政の建て直しが急務でした。今は潤沢な予算を組めて、自分の公約を進めることができるのです」(以下、「」内は大塚氏)

 都議会では、都議会自民党と「対立構造」を作り、世論を味方にして支持率を高めた小池氏。職員とは良好な関係を築けているのか。

「職員を信用はしているけど、信頼しているようには見えません。外部から登用した顧問団を連れてきて、職員の意見にはあまり耳を傾けないと言われています。都職員は非常にロイヤリティ(忠誠心)が高く、知事に尽くすという伝統があります。知事に恥をかかせるのは自分たちの恥という意識が強く、猪瀬直樹氏(70)や舛添要一氏(68)が身から出たサビで追い込まれた時も、どのように守るのかを考えていた。小池氏も職員の“伝統”を知れば、距離は縮まるでしょう」

 豊洲市場への移転問題では百条委員会に石原氏が呼び出されたが、東京ガスとの用地買収交渉は「部下に一任していた」と繰り返すばかり。だが、役所のシステムで、知事に報告をしないで物事を進めることはないという。

「就任時はかなりの意気込みでしたが、週に2、3日しか都庁に顔を見せなかったり、来ても数時間。それで膨大な都政の問題を掌握するのは難しい。石原氏はどんな問題でも、興味がなければ関心を示さず、局長や幹部が石原氏に報告して決済をもらう時は、短い時間にどうやってわかりやすく説明するのか、それが大きな問題でした」

 石原氏がどれだけ豊洲問題に関心を示して取り組んだのかはわからないが、現在の混乱を招いた「原因」の一人であることは間違いない。一方、同じ「移転」でも、大塚氏が高く評価するのは79年から4期務めた鈴木氏だった。

「都庁舎を有楽町から西新宿に移転させる時、最初は半分近くの議員が移転に反対していました。区議や副都知事を個別に呼んで話を聞き、多くの人の意見に耳を傾けて議論を重んじたのです。都庁移転に限らず、ふだんから人に会うことをいとわず、毎日分単位でスケジュールが埋まり、トイレに行く暇もなかった。とにかく仕事熱心で酒の席でも議論をするのが好きで、女性の話や冗談を言う人ではなかったですね」

「都政研究」では、管理職試験対策や人事予想記事も人気企画で、その号は部数が伸びたという。

「組織にとって人事は一番の関心事。長年仕事をしていると人事の流れは見当がつきます。あまり核心に触れると、人事当局から注意されることもあり、わざと予想を外す時もあった」

 最後に小池都政が注目されるタイミングで廃刊を決めた理由を、こう明かす。

「年齢による体力・気力の低下もありますが、“政治ショー”になった最近の都政にうんざりした面もあります。行政課題が山積みなのに、小池氏がやっているのは問題をほじくるだけ。都民のために何がしたいのか、はっきり見えません」

「生き字引」の辛口エールは、小池氏に響くのか──。

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