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記事全文を読む→「監督・北野武」その男、鬼才につき(1)六平直政が体感した「テスト1回」の本番主義
89年、「その男、凶暴につき」で衝撃の初メガホンを取ると、98年にベネチア国際映画祭金獅子賞、03年には銀獅子賞を受賞した。その間、そして現在も世界と対峙する日本の鬼才・北野武監督は数々の現場で撮影哲学や秘話を生み出し続けている。まずは「北野組」の常連・六平直政が口を開いた。
切腹して腸が出てる横で飯
六平(むさか)直政が初めて北野武監督と出会ったのは、99年のことだった。以後、5作の「北野映画」に出演する常連となったが、当時をこう回想する。
「芸能界をはじめ、各界の大物たちが集まった麻布のバー『ホワイト』で、俺と中村勘三郎(当時・勘九郎)さんが飲んでたんだよね。そしたら、たけしさんが店に入ってきたんですよ。勘三郎さんがたけしさんと親友だから、たけしさんを席に呼んで3人で飲むことになった」
北野監督が初対面の六平に語りかけてきたという。
「六平さんの作品、全部見てるよ」
「ホントですか?」
「インチキ臭い刑事役とか、チンピラみたいなのとか、変なのいっぱい出てるでしょ?」
六平の過去の仕事について、北野監督はやたらとうれしそうにしゃべり続けた。六平が恐縮していると、突然、まさかの言葉が聞こえたという。
「六平さん、ちょっとやってもらいたい役があるんだけど」
「えっ? 何でもやらせてください」
即答だった。
「実は、もうキャスティング終わっちゃったんだけどお願いしますよ」
「はい、わかりました」
その場では、どんな映画のどんな役なのかも、聞かなかったそうだ。
六平に用意されたのは、01年に公開された9作目「BROTHER」(オフィス北野/松竹)でのヤクザの組長役。親子の盃を交わすシーンで初登場した。
「北野監督は『六平さんの役は、久松組の上部組織の親分・渡哲也さんの次に偉い“NO2”だから』という説明だけしてくれました。演技指導? 『六平さん、とりあえず御飯食べてて』。それだけ。それ以外、何も言われなかったね(笑)」
初めて体感した北野監督は、とにかく「本番主義」だった。テストを1回ぐらいやったら、すぐ撮影に入ったという。「はい、本番!」の声とともに、六平は言われたとおり丼飯をムシャムシャと食べた。
「あっ、カットカット!
やっぱりアングラ(出身)だからムシャムシャ食べるね」
「ムシャムシャ食べるのはまずいですかね?」
「まぁ、普通の感じで。じゃ本番!」
役者に対して、実に単純なことしか言わない。
「普通に食べたらOKになりました。あとで本編を見たら、大杉漣さんが演じるヤクザの幹部が切腹してる横で、俺が悠然と丼飯を食べてるシーンだったわけ。別撮りだったから全然知らなかった。切腹して腸が出て血だらけになってる横で、俺が飯食ってるんだから(笑)。考えたら怖いシーンだよね」
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