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記事全文を読む→深作欣二「蒲田行進曲」素人、平田満への気遣い
〈大部屋なんて、いったん入ったら性根が腐ってしまうんだって〉
映画「蒲田行進曲」(松竹)のメイク女性のセリフである。その性根が腐ってしまいそうな「東映の大部屋」が物語の主軸であり、新参者の風間も平田もビクビクしながら東映・京都撮影所の古参スタッフと接し、2人で顔を合わせては「早く終わらせて帰ろう」と慰め合っていた。
風間は監督としての深作と向き合うのは初めてだったが、意外な縁があった。
「子役をやっていた小学3年生の時に、1本だけ『断崖の少年』って東映の児童映画で主演をやって。これのチーフ助監督がサクさんで、それを伝えたら『あの時の坊主か!』って思い出してもらえたんです」
児童映画では冬の寒い日に川べりのロケが続いた。風間少年が寒さに震えていると、深作が河原に置いたドラム缶の風呂に放り込んだという。
それから20年以上が経っての本格的な演出だったが、深作は風間に「舞台のままにやってくれたらいい」と伝えた。深作らしく、ジッとしている姿より動きを撮ってやるとのサインだった。そのため風間は、舞台のように張りのある声を出し、録音技師たちを困らせている。
さらに深作は平田に対しては、より気遣いを見せたという。
「風間さんは当時も映画にたくさん出ていたが、僕はこれが2本目の素人なんですよ。それもあって、細かいことを言ってもコイツのよさは出ないだろうと。監督は常に『いいんだ、いいんだ、舞台そのままで』と言ってくれました」
深作は平田を役名のままに「ヤスさん」と呼んだ。シーンのたびに「ヤスさん、このセリフはどう言う?」と意見を求め、平田なりのプランを言うと「お、そうだよな」と基本的に同意してくれた。
それだけではない。よく見れば深作は常にスタッフルームに出入りし、スタッフを誘って遅くまで酒を飲んだり麻雀をやったりしながら、また翌朝にはその日の撮影プランをこしらえている。いったい、いつ寝ているんだろうかと不思議に思うほどタフだった。
「大部屋の話だからたくさんの役者が出て、いろんな人に見せ場を作ってあげている。それは『仁義──』と同じで、それが深作さんのエネルギーになっていたと思います」
風間は舞台と比べて、やはり映画は特有の世界なんだと随所に感じた。
〈キャデラックに乗るのに免許がいるのか!〉
銀ちゃんの無鉄砲さを表すセリフだが、舞台では「ベンツ」であり、実際には車は登場しない。映画では王将のステッカーを貼り巡らせた豪華な車に格上げされている。
「つかさんのセリフの順序を入れ替えた箇所もあったけど、ある意味うなづけた。映画人があの舞台をみごとに映画化したんだなって思いましたね」
そして風間が驚嘆したのは、クライマックスに用意された「階段落ち」のセットである。舞台版ではイメージシーンとして装置はないが、映画では39段もの大掛かりなセットが置かれていた‥‥。
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