芸能

千葉真一、深作欣二の初監督の怒号に驚いた

 今から半世紀前、同じ映画で「初監督」と「初主演」を分かち合った。そして10年前、監督の壮絶な遺作である「バトル・ロワイアルⅡ」にも、やはり千葉真一の名前はクレジットされていた─。誰よりも深作欣二を知る男が、稀代の演出術を語った。

「おい、お前、2度と俺の映画には出さねえ、帰れ!」

 千葉真一(73)は深作欣二の怒号に驚いた。千葉にとって初主演作、深作にとって初めての監督作品である「風来坊探偵 赤い谷の惨劇」(61年/ニュー東映)の撮影初日のこと。千葉にとって東映の2期先輩にあたる室田日出男がうなだれて立っている。

「前の日に酔っぱらってホテルのガラスを叩き割り、腕がざっくりと切れていた。その姿に監督が怒って帰したという波乱のクランクインだったよ」

 ただし、深作は3年後に室田の出入り禁止を解き、のちに川谷拓三らと「ピラニア軍団」を結成させ、生涯にわたって重要な役を与えている。深作の死より半年ほど早く室田が逝くと、万感の思いで弔辞を読み上げたほどの関係だった。

 そんな室田以上に結びつきが強いのが千葉である。主演デビュー作を皮きりに、深作の遺作である「バトル・ロワイアルⅡ」(03年/東映)まで、数多くの監督作に出演している。千葉にとって師である深作は、出会いの「風来坊探偵」から強い印象を残した。

「浅間山麓でのロケの待ち時間、監督が『寒いなあ』ってつぶやいたかと思うと、撮影用の台をソリ代わりにして雪の斜面をジャンプしているんだよ。もう役者もスタッフも一斉に『じゃあ俺たちも!』ってなって、ああいう監督は今までにいなかった」

 こうした遊びの部分だけではなく、本来の演出面においても深作は周りを鼓舞する。テストを執拗に繰り返し、撮影が深夜まで及ぶことは広く知られているが、決して弛緩させない。

「OK、それでいい、いいんだけどこっち側をちょっと変えてみよう。じゃあ、もう1回!」

 深作と千葉のコンビは、以降も「ファンキーハットの快男児」(61年/ニュー東映)や「カミカゼ野郎 真昼の決斗」(66年/にんじんプロ)でアクション路線を奔走。そして68年、これらを下敷きにしたドラマが始まり、日本におけるアクションスターとしての千葉を決定的なものにする。最高視聴率が30%を超えた「キイハンター」(TBS)のことである。このドラマの第1話を深作が演出し、全体の方向性を千葉とともに決定づけた。

「毎週のドラマなのに、深作さんの1本目だけで2カ月くらい撮っていた。プロデューサーから『早く上げてくれよ』と泣きつかれたくらい。だって深作さんとは、これまでにないアクションを作ろうと思っていたから、いろんな話をしたよ。例えば『手錠のまま脱走して線路を通過する汽車で切断される』とか、洋画のいいところを参考にしたりね。監督に話すと『いいよ、そういうのどんどんやれ!』って言ってくれるんだ」

 同ドラマは人気のままに5年続いた。千葉がキャップ役の丹波哲郎に降板を申し入れ、これを了承した丹波が「千葉がいないなら成立しない」と番組自体を終了させる。アイドル的な人気を誇った千葉は、そんなイメージをガラリと変える作品に出会った。深作欣二の名をとどろかせた「仁義なき戦い」の2作目、「広島死闘篇」(73年/東映)である─。

カテゴリー: 芸能   タグ: , ,   この投稿のパーマリンク

SPECIAL

アサ芸チョイス:

    ゲームのアイテムが現実になった!? 疲労と戦うガチなビジネスマンの救世主「バイオエリクサーV3」とは?

    Sponsored

    「働き方改革」という言葉もだいぶ浸透してきた昨今だが、人手不足は一向に解消されないのが現状だ。若手をはじめ現役世代のビジネスパーソンの疲労は溜まる一方。事実、「日本の疲労状況」に関する全国10万人規模の調査では、2017年に37.4%だった…

    カテゴリー: 特集|タグ: , , , |

    藤井聡太の年間獲得賞金「1憶8000万円」は安すぎる?チェス世界チャンピオンと比べると…

    日本将棋連盟が2月5日、2023年の年間獲得賞金・対局料上位10棋士を発表。藤井聡太八冠が1億8634万円を獲得し、2年連続で1位となった。2位は渡辺明九段の4562万円、3位は永瀬拓矢九段の3509万円だった。史上最年少で前人未到の八大タ…

    カテゴリー: エンタメ|タグ: , , , |

    因縁の「王将戦」でひふみんと羽生善治の仇を取った藤井聡太の清々しい偉業

    藤井聡太八冠が東京都立川市で行われた「第73期ALSOK杯王将戦七番勝負」第4局を制し、4連勝で王将戦3連覇を果たした。これで藤井王将はプロ棋士になってから出場したタイトル戦の無敗神話を更新。大山康晴十五世名人が1963年から1966年に残…

    カテゴリー: エンタメ|タグ: , , , , , |

注目キーワード

人気記事

1
タモリが「後継指名」する大物アイドル(1)「ブラタモリ」終了のワケ
2
水谷隼がバラした「卓球界ははいてない人ばっかり」で平野美宇や石川佳純は…という素朴な疑問【アサ芸プラス2024年2月BEST】
3
タモリが「後継指名」する大物アイドル(2)終活を決意させた夫人以外のキーマン
4
掃除機をかけたら家中に大繁殖!この春に知っておきたい「トコジラミ対策」
5
【旅番組の暗黒部】太川陽介とは大違い…的場浩司「スタッフを恫喝」で食事抜きを強要【アサ芸プラス2024年2月BEST】