政治

元国連捜査官が見た北朝鮮「ブラックホール」(7)北朝鮮にしかできない隙間産業

「『銀河3号』に使われている部品は、秋葉原などで買える電気部品をハンダ付けしたもので、手作り感いっぱいのホームメイド(笑)。でも、それが長距離ロケットとして実際に飛ぶわけです。西側諸国の技術者たちは北朝鮮の技術力は低いとか、みすぼらしいと吐き捨てますが、それは西側から見たスタンダード。見てくれなんて彼らには必要ない。北朝鮮が求めるのはデザインうんぬん、信頼性うんぬんではなく、1回でいいから飛ぶロケット。そして、そういうロケット開発を相次いで成功させているということです」

 市販の部品をハンダ付けしたみすぼらしいミサイルが宙を舞う。乱暴で滑稽な話だが、紛争地域では高価な兵器など必要ない。「ホームメイド」だが、とりあえず飛ぶ、安価な兵器に需要が高まるのは必然なのだ。

「ロシアの軍事企業が扱うのは、先端的で高価な武器。正直、こんな割の合わないビジネスは手がけません。だから需要は尽きない。これは北朝鮮にしかできない隙間産業というわけです」

 加えて国連安保理による制裁逃れを画策する国々にとって、いつどこから調達したのかを判断することが難しい旧兵器は都合がいい。つまり、両者の利害がピタリと一致しているため、関係を断ち切ることはきわめて難しいのだ。

「ウガンダは昨年10月、北朝鮮の軍や企業関係者を送還。スーダンも同年11月、北朝鮮と全ての軍事・経済関係を断つと宣言しました。ただ、需要がある国はそう簡単に北朝鮮と手は切れない。ナミビアは一昨年、世界中で弾道ミサイルや通常兵器の密輸を展開する北朝鮮企業『朝鮮鉱業開発貿易会社(KOMID)』との契約解消を宣言したものの、名前を変えたフロント企業がプロジェクトを継続していました。国連が何度圧力をかけても、ナミビアはなかなか北朝鮮と手を切ろうとしなかった。最大の理由は、軍の元トップである統合本部議長が北朝鮮とベッタリの関係で、その妻が外務大臣だったため、切っても切れない仲でした。北朝鮮が支援する国や組織の中には、特殊部隊や軍隊で大量虐殺を繰り返してきた連中も少なくない。彼らはそんな人間たちと個人的な関係も深い。ヒューマンネットワークを遮断することが、実は一番の問題になるんです」

 さて、ここまでは世界に広がる北朝鮮の核・ミサイル販売・修理ネットワークを紹介してきた。そんな北朝鮮にとって重要な物資調達ルートになっているのがなんと、台湾だという。

「台湾は中国が掲げる『一つの中国』という原則の下、国連への加盟が認められていません。そのため、国連が台湾当局と接触することは難しい。北朝鮮にとっては、そのアンタッチャブルな存在が逆に好都合なため、台湾を制裁網の抜け穴として利用してきた経緯があるんです」

カテゴリー: 政治   タグ: , , , ,   この投稿のパーマリンク

SPECIAL

アサ芸チョイス:

    ゲームのアイテムが現実になった!? 疲労と戦うガチなビジネスマンの救世主「バイオエリクサーV3」とは?

    Sponsored

    「働き方改革」という言葉もだいぶ浸透してきた昨今だが、人手不足は一向に解消されないのが現状だ。若手をはじめ現役世代のビジネスパーソンの疲労は溜まる一方。事実、「日本の疲労状況」に関する全国10万人規模の調査では、2017年に37.4%だった…

    カテゴリー: 特集|タグ: , , , |

    藤井聡太の年間獲得賞金「1憶8000万円」は安すぎる?チェス世界チャンピオンと比べると…

    日本将棋連盟が2月5日、2023年の年間獲得賞金・対局料上位10棋士を発表。藤井聡太八冠が1億8634万円を獲得し、2年連続で1位となった。2位は渡辺明九段の4562万円、3位は永瀬拓矢九段の3509万円だった。史上最年少で前人未到の八大タ…

    カテゴリー: エンタメ|タグ: , , , |

    因縁の「王将戦」でひふみんと羽生善治の仇を取った藤井聡太の清々しい偉業

    藤井聡太八冠が東京都立川市で行われた「第73期ALSOK杯王将戦七番勝負」第4局を制し、4連勝で王将戦3連覇を果たした。これで藤井王将はプロ棋士になってから出場したタイトル戦の無敗神話を更新。大山康晴十五世名人が1963年から1966年に残…

    カテゴリー: エンタメ|タグ: , , , , , |

注目キーワード

人気記事

1
JR東日本に続いて西と四国も!「列車内映像」使用NG拡大で「バスVS鉄道旅」番組はもう作れなくなる
2
【ボクシング】井上尚弥「3階級4団体統一は可能なのか」に畑山隆則の見解は「ヤバイんじゃないか」
3
これはアキレ返る!「水ダウ」手抜き企画は放送事故級の目に余るヒドさだった
4
舟木一夫「2年待ってくれと息子と約束した」/テリー伊藤対談(3)
5
リストラされる過去の遺物「芸能レポーター」井上公造が「じゅん散歩」に映り込んだのは本当に偶然なのか