社会

東京都「首都直下地震等被害想定」の大ウソを暴く(9)積層ゴム破断、擁壁激突…その時、免震ビルの脆弱躯体は一気に崩壊する!

 免震ビルの躯体(上部構造)の強度は「旧耐震基準並み」か「それ以下」──。前回は免震構造物が抱える構造的な脆弱性について指摘したが、その脆弱性は時に免震ビルを一気に倒壊させるリスクにもなり得る。

 中でも懸念されているのが、免震ゴムの破断だ。免震構造に詳しい建築工学の専門家が、硬い表情で言う。

「地震の揺れを吸収する免震ゴムは、設計限界を超える揺れに襲われた場合、当然のことながら破断してしまいます」

 そして、次のようにも警告するのだ。

「今回の新被害想定が対象としている地震のうち、どの地震が設計限界を超える揺れをもたらすのかは、地震が来てみなければわからないとされています。ただ、多くの専門家が口を揃えて心配しているのが、建物の直下や地表の断層が激しく動く、震源の極めて浅い巨大直下型地震です。この時、長周期パルスと呼ばれる地震波(6月16日配信の当連載第7弾の記事参照)が発生すると、免震ビルの基礎と躯体の間に設置されている免震ゴムが破断を来し、旧耐震基準以下の強度しかない躯体が一気に崩壊すると考えられています」

 倒壊のリスクはそれだけではない。建築工学の専門家が続けて指摘する。

「仮に免震ゴムが破断しなかったとしても、想定外の揺れで水平方向に大きく移動した躯体が、基礎部分や免震ゴムを囲む擁壁に激突してしまう危険性があるのです。その際、躯体がどの程度の損傷を受けるかは不明とされていますが、長周期パルスが躯体にもたらす横揺れの加速度を考えると、躯体が擁壁への激突によって致命的な損傷を受ける可能性、要するに躯体が崩壊してしまう可能性は否定できません。いずれにせよ、地震に最も強いとされてきた免震ビルの安全神話は、すでに崩れ去っているのです」

 しかし、免震ビルが抱える恐怖のリスクはこれだけではなかった。次回は盲点中の盲点とも言うべき、意外なリスクに迫りたい。

(森省歩)

ジャーナリスト、ノンフィクション作家。1961年、北海道生まれ。慶應義塾大学文学部卒。出版社勤務後、1992年に独立。月刊誌や週刊誌を中心に政治、経済、社会など幅広いテーマで記事を発表しているが、2012年の大腸ガン手術後は、医療記事も精力的に手がけている。著書は「田中角栄に消えた闇ガネ」(講談社)、「鳩山由紀夫と鳩山家四代」(中公新書ラクレ)、「ドキュメント自殺」(KKベストセラーズ)など。

カテゴリー: 社会   タグ: , , ,   この投稿のパーマリンク

SPECIAL

アサ芸チョイス:

    ゲームのアイテムが現実になった!? 疲労と戦うガチなビジネスマンの救世主「バイオエリクサーV3」とは?

    Sponsored

    「働き方改革」という言葉もだいぶ浸透してきた昨今だが、人手不足は一向に解消されないのが現状だ。若手をはじめ現役世代のビジネスパーソンの疲労は溜まる一方。事実、「日本の疲労状況」に関する全国10万人規模の調査では、2017年に37.4%だった…

    カテゴリー: 特集|タグ: , , , |

    藤井聡太の年間獲得賞金「1憶8000万円」は安すぎる?チェス世界チャンピオンと比べると…

    日本将棋連盟が2月5日、2023年の年間獲得賞金・対局料上位10棋士を発表。藤井聡太八冠が1億8634万円を獲得し、2年連続で1位となった。2位は渡辺明九段の4562万円、3位は永瀬拓矢九段の3509万円だった。史上最年少で前人未到の八大タ…

    カテゴリー: エンタメ|タグ: , , , |

    因縁の「王将戦」でひふみんと羽生善治の仇を取った藤井聡太の清々しい偉業

    藤井聡太八冠が東京都立川市で行われた「第73期ALSOK杯王将戦七番勝負」第4局を制し、4連勝で王将戦3連覇を果たした。これで藤井王将はプロ棋士になってから出場したタイトル戦の無敗神話を更新。大山康晴十五世名人が1963年から1966年に残…

    カテゴリー: エンタメ|タグ: , , , , , |

注目キーワード

人気記事

1
あの「号泣県議」野々村竜太郎が「仰天新ビジネス」開始!「30日間5万円コース」の中身
2
3Aで好投してもメジャー昇格が難しい…藤浪晋太郎に立ちはだかるマイナーリーグの「不文律」
3
「コーチに無断でフォーム改造⇒大失敗」2軍のドン底に沈んだ阪神・湯浅京己のボコボコ地獄
4
フジテレビ・井上清華アナ「治らない顎関節症」と「致死量ストレス」の不穏な関係
5
【大騒動】楽天・田中将大が投げられない!術後「容体不良説」も出た「斎藤佑樹との立場逆転」