社会

医師・帯津良一の健康放談「2合の晩酌を1合にする人生は楽しいですか?」(2)

20150212r2nd

 実は、血圧や総コレステロール、中性脂肪、BMI(肥満度)は、メタボの基準とされる数値よりも少し高めのほうが長生きする、という報告が、複数の医療関係者から提出されています。数値で表すと次のとおりになります。

●総コレステロール 240~250mg/dl

●最高血圧 140~160mmHg

●中性脂肪 150~300mg/dl

●BMI 25~29(指数)

 09年に厚生労働省が発表した「体型別の平均余命」の結果でも、最も平均寿命が長かったのは、40歳の時点で「太り気味」だった人。いちばん早死にしているのが「やせ」で、「肥満」の人と比較しても、4~5歳も寿命が短いことが判明しています。

 江戸時代中期の禅僧、白隠慧鶴〈はくいんえかく〉の絵「すたすた坊主」で描かれているお坊さんのおなかも、かなりふっくらとしています。でも、太っていることなど気にせず、お酒と菜っ葉を手に持ち、実にいい笑顔をしている。

「すたすた坊主」にとって、酒と食は生きがいだったのでしょう。これは、昔から健康か不健康かの決め手は腹囲のサイズではなく、胸に煮えたぎる「ときめき」を重視していた証拠です。「ときめき」を心の中に持っていれば、太っていてもいいということです。

 メタボと診断されたら、摂取カロリーと合わせて脂肪やたんぱく質を少々、制限するといいと言われています。しかし、この指導法では数値を気にする食生活に陥ってしまいます。

 メタボを改善したいのであれば、暴飲暴食を避けて、心と体によしと思える食事の摂取量を減らすだけで十分。何を食べるべきで何を食べてはいけない、ということはありません。本当にうまいと思える旬のものや地場のものを、腹八分食べる。これは「いい人生」を歩むことにもつながります。

「粗食」という言葉に引きずられてはいけません。自分がうまいと感じるか否かを選ぶ基準にしましょう。食べる量を少し調整するだけでいい。苦しんではいけないのです。

 私は湯豆腐や旬の刺し身、枝豆とそら豆、里芋とじゃがいもが大好きです。

 それこそ「鬼平犯科帳」に登場する呑んべぇの肴ばかり(笑)。私が太っているのは、太っていることを気にせず、毎日の晩酌を欠かさないからです。

 ただし、年齢を重ねたらメタボかどうかは関係なく、適度な運動は必要です。私が続けているのは、気功と太極拳。太極拳は相当な運動量になります。患者さんを指導するため自分も運動をすることになります。それが結果として自分のためになっています。

 おかげで今でもいざという時、例えば電車に乗り遅れそうになったら、全力でダーッと走れます。

 ですから、腹囲のサイズや「数値」ではなく、胸に煮えたぎる「ときめき」があるかどうかを判断、指導するのが医者の役目だと私は考えています。そんなお医者さん、あまりいないですけどね。

◆プロフィール 帯津良一(おびつ・りょういち) 医学博士。東大医学部卒、同大医学部第三外科、都立駒込病院外科医長などを経て、帯津三敬病院を設立。医の東西融合という新機軸をもとに治療に当たる。「人間」の総合医療である「ホリスティック医学」の第一人者。

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