スポーツ

伝説の引き分けの舞台裏!(5)競馬 10年オークス 史上初「GⅠ同着1位」決定直後に大怒号 「ダイワとウオッカも同着でいいだろッ」

「ハナ差」「クビ差」など、その接戦ぶりを独自の表現で表す競馬レースの世界。まったく同じ着差/着順のことは「同着」と呼ぶ。史上初のGⅠ同着となったアパパネ&サンテミリオン。昨年オークスの現場にもいた、文筆家の島田明宏氏(46)が検量室での一幕を語る。


 接戦のことを「デッドヒート」と言いますが、これはそもそも競馬用語なんです。英米では競馬の同着の意味に当たります。実はゴール前の接戦は競馬の専売特許のようなもので、これには馬という動物の習性が関係しています。馬は捕食動物から逃げるもの。それも群れ(集団)で逃げます。競馬は最大18頭で競走しますが、先頭の馬が並んで走っていくことは、実はわりと普通のこと。ですから競馬の趣意は、むしろ「常に接戦になるから馬にレースをさせるとおもしろいね」ということかもしれません。
 昨年5月のオークスでは、サンテミリオンを桜花賞馬のアパパネが鋭く追い込み、写真判定に。12分待たされたあと、なんと同着で確定しました。私は、あのレースが行われた東京競馬場の検量室の前にいましたが、JRAの職員が着順を示すホワイトボードに「同着」と書き込んだ瞬間にどよめきが上がりましたね。と同時に、期せずして、厩舎関係者か報道陣からか、「だったらダイワスカーレットとウオッカも同着でいいじゃないか!」という叫びが聞こえました。
 というのは、これまた競馬史上屈指の名勝負と呼ばれている08年の秋の天皇賞のことを誰もが思い出していたからです。出走全17頭が重賞ウイナーという好メンバーから、ダイワスカーレット(安藤勝騎手)が逃げ、直線はライバル・ウオッカ(武豊騎手)がぐんぐんと追い込む一騎打ち。レコード決着となった名手同士のハイレベルのレースは、ウオッカが2㌢だけ差し切っていた。騎手が一流だと名勝負の純度が高まります。
 あのレースもやはり長い写真判定になりましたが、両馬とも人気があったし、「これだけの名勝負は同着でもいいんじゃないか?」という空気が確かに流れていたんです。けれども決着をつけた。だから「やっぱりGⅠは同着ナシなんだな」と納得したのも事実。
 しかし、オークス以降、GⅠの1着同着が解禁‥‥となったかどうかわかりませんが、僕としてはまた起こってほしいですね。「我が最高の同着を持っていること」が競馬ファンの醍醐味でもあると思いますから。
 私の場合は、タマモクロスとダイナカーペンターが1着同着した88年の阪神大賞典こそが「我が最高の引き分け」。のちに世間を揺るがせるタマモクロスVSオグリキャップの伝説の芦毛決戦が起こるわけですが、あのタマモの追い込みが2着だと判定されていたら、タマモクロスの連勝街道がとぎれ、競馬ブームは起こらなかったとすら思います。
 ええ、当時の私はタマモクロスの大ファンでした。助かった〜と、馬券と拳を握りましたよ(笑)。

カテゴリー: スポーツ   タグ:   この投稿のパーマリンク

SPECIAL

アサ芸チョイス:

    ゲームのアイテムが現実になった!? 疲労と戦うガチなビジネスマンの救世主「バイオエリクサーV3」とは?

    Sponsored

    「働き方改革」という言葉もだいぶ浸透してきた昨今だが、人手不足は一向に解消されないのが現状だ。若手をはじめ現役世代のビジネスパーソンの疲労は溜まる一方。事実、「日本の疲労状況」に関する全国10万人規模の調査では、2017年に37.4%だった…

    カテゴリー: 特集|タグ: , , , |

    藤井聡太の年間獲得賞金「1憶8000万円」は安すぎる?チェス世界チャンピオンと比べると…

    日本将棋連盟が2月5日、2023年の年間獲得賞金・対局料上位10棋士を発表。藤井聡太八冠が1億8634万円を獲得し、2年連続で1位となった。2位は渡辺明九段の4562万円、3位は永瀬拓矢九段の3509万円だった。史上最年少で前人未到の八大タ…

    カテゴリー: エンタメ|タグ: , , , |

    因縁の「王将戦」でひふみんと羽生善治の仇を取った藤井聡太の清々しい偉業

    藤井聡太八冠が東京都立川市で行われた「第73期ALSOK杯王将戦七番勝負」第4局を制し、4連勝で王将戦3連覇を果たした。これで藤井王将はプロ棋士になってから出場したタイトル戦の無敗神話を更新。大山康晴十五世名人が1963年から1966年に残…

    カテゴリー: エンタメ|タグ: , , , , , |

注目キーワード

人気記事

1
2軍暮らしに急展開!楽天・田中将大⇔中日・ビシエド「電撃トレード再燃」の舞台裏
2
不調の阪神タイガースにのしかかる「4人のFA選手」移籍流出問題!大山悠輔が「関西の水が合わない」
3
ボクシング・フェザー級「井上尚弥2世」体重超過の大失態に「ライセンスを停止せよ」
4
「メジャーでは通用しない」藤浪晋太郎に日本ハム・新庄剛志監督「獲得に虎視眈々」
5
新庄監督の「狙い」はココに!1軍昇格の日本ハム・清宮幸太郎は「巨人・オコエ瑠偉」になれるか