社会

秋津壽男“どっち?”の健康学「寝る前に飲む“寝酒”は体に悪影響はある?アルコールの覚醒作用による睡眠の質低下」

 眠れない夜に「一杯飲んで寝る」という人は少なくないでしょう。英語圏では寝酒を「ナイトキャップ」と呼称しています。お酒を飲むとホロ酔いになって眠気が襲ってくる人もいるでしょう。ではここで質問です。寝酒は健康にとってプラスの行為でしょうか、マイナスの行為でしょうか。

 一般的に、寝る前にお酒を飲むと、緊張が緩和されリラックスするので寝入りはよくなります。ただし、アルコールには睡眠作用と覚醒作用の相互する作用があります。飲酒量が多いと、3~4時間ほどでアルコールがアルデヒドという毒素に変わります。アルデヒドの覚醒作用によって交感神経が刺激されて、目が覚めてしまうのです。つまり、睡眠の導入こそ助けてくれますが、質のよい睡眠は妨げられるというわけです。

 それどころか、飲みすぎると入眠時にも目が冴えてきます。その目安ですが、週に数度で1回当たり缶ビール1~2本、あるいは日本酒1合程度なら、問題ありません。酒量が多くなるとノンレム睡眠の状態が長くなり、熟睡状態のレム睡眠の時間帯が減少して結果的に覚醒します。

 他に、筋弛緩作用のリスクもあります。あおむけで寝ると弛緩した舌が喉に落ちて気道が狭くなります。ふだんいびきをかかない人がいびきをかくこともあり、これが原因で睡眠時無呼吸症候群を引き起こす可能性があります。無呼吸の状態が長時間続けば心臓が無理をして酸素を送ろうとし、血管に負担がかかります。高血圧や突然死の危険性のある脳梗塞、心筋梗塞などのリスクを高めます。

 それだけではありません。お酒を飲んで寝ると、朝起きた時に喉がカラカラに渇いているということがあるかと思います。アルコールは分解される過程で水分を必要としますから、体が脱水状態になるのです。大量に飲んだまま寝てしまうと最悪の場合には、血液がドロドロになって血栓を作ってしまい、心筋梗塞を起こしてしまう危険性もあるので侮れません。

 寝酒の際は何も食べないことが多いでしょう。そうすると、胃の内部が荒れやすくアルコールの吸収も早くなります。晩酌のように食事と一緒に酒を飲むと、食べた物が胃の粘膜の上に層を作るため胃が荒れにくくなり、アルコールの吸収も遅くなります。もちろん、飲みすぎると肝臓に負担をかける弊害はあります。お酒をおいしく健康的に飲むなら食中酒、つまり晩酌が最も効果的です。

 こう考えると、寝酒は決して体にいい行為とは言えません。酒を楽しむわけでもなく、寝るために飲むのは体に大きな負担をかけるだけです。何も食べず、人としゃべることもない酒は「アルコールの効用ゼロ」なのです。

 日本人の多くは睡眠薬に頼るのが怖いため寝酒をするわけですが、医師の立場から言えば、不眠で寝酒に頼るよりも、適量の睡眠薬を飲んだほうが体への害は少ないと言えます。また、寝酒は飲めば飲むほど耐性がつくためアルコールの量が増え、結果としてアルコール依存症にもなりかねません。言うまでもありませんが、睡眠薬とアルコールの併用は自殺行為なので絶対にやめてください。

 さて、寝酒を飲んで3~4時間後に起きたい、という人に、上手な寝酒の飲み方をお教えしましょう。それは養命酒や梅酒を少量飲むことです。少量のアルコールにより体が軽くほてり、血流と寝つきをよくしてくれるので「酔って寝る」ことにはなりません。

 寝酒はお酒が好きだけど弱い人に向いています。逆に酒が強い人の寝酒は「酔って寝る」こととなります。前述のとおり体への悪影響のほうが強くなるため、量が飲める人ほど寝酒は我慢してください。

■プロフィール 秋津壽男(あきつ・としお) 1954年和歌山県生まれ。大阪大学工学部を卒業後、再び大学受験をして和歌山県立医科大学医学部に入学。卒業後、循環器内科に入局し、心臓カテーテル、ドップラー心エコーなどを学ぶ。その後、品川区戸越に秋津医院を開業。

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