芸能
Posted on 2013年02月06日 00:00

百恵と淳子、愛の命題に答えた百恵

2013年02月06日 00:00

 クライマックスの撮影を迎える前に、河崎は百恵に聞いてみた。

「あなたは、愛のために死ねますか?」

 百恵は5分ほど沈黙し、そして神妙な表情で答えた。

「それは‥‥とても難しいことだと思います」

 物事に対して浮ついた考えをしない百恵らしい返答だった。ところが、この投げかけがしばらく経って河崎の耳に戻ってくる。

 場所は東京・帝国劇場、撮影から約1年後の79年10月1日に開かれた百恵初のリサイタルでのことだった。招待を受けた河崎は、誰にともなく告げる百恵の言葉を客席で聞いた。

「‥‥愛のために死ねる相手が見つかりました」

 河崎は「あっ!」と思った。あの日の答えを、今、この場で出しているのかと。まだ友和の名は出していないが、これが事実上の恋人宣言であり、その1年後の結婚・引退へと向かっていく。

「言われてみれば『炎の舞』の撮影の後半から、2人の動きが“恋仲”として違うように感じられた。彼女が真冬の凍るような川に入ることもあったし、2ページもの長い情念的なセリフに手こずった場面もあったけど、厳しいスケジュールも“支え”があって頑張れたんだと思います」

 正月映画として公開されると、河崎のもとには百恵から丁寧な毛筆で書かれた年賀状が届いた。そこには、あと数日でハタチを迎える百恵らしい感謝が込められていた。

〈10代最後の映画を撮っていただいてありがとうございました〉

 今も河崎の宝物として大切に保存してある。

 そんな河崎と、同期で東宝に入り、同じように「淳子・百恵映画」の両方を撮ったのが小谷承つぐ靖のぶである。前述の友和主演の「残照」と同時公開だった「愛の嵐の中で」が淳子と出会った最初の一篇だ。

「淳子ちゃんのそれまでの映画は原作がついていた。会社から78年のGW映画でという注文を受け、彼女の明るさやコケティッシュな魅力を出せるオリジナルの企画にしようということになったんです」

 淳子演じる黛夏子は、姉・雪子の自殺を不審に思い、姉と関わりのあった男たちを訪ねて歩く。篠田三郎、地井武男、田中邦衛、岸田森、中村敦夫といった役者たちが並び、これまでにないタッチの作風でもあった。

「ベテランの男優陣を相手にすることで、彼女のいろんな面が出てくるんじゃないかというのが狙い。20歳になったばかりの撮影だったけど、歌には頼らず、女優としての魅力を開花させたかった」

 小谷の記憶によれば淳子の取り組みはまじめそのものであり、やや硬さが目立ったように感じた。それでも映画そのものは凝った作りになり、まずまずの興行成績を出せたのだが──、

「今でもファンの人たちからDVD化や上映会のリクエストをいただくんです。ただ残念なことに、彼女の宗教問題がストップをかけて、なかなか実現しませんね」

 小谷は翌年、百恵・友和のコンビ10作目となる「ホワイト・ラブ」(79年、東宝)の撮影に取り組んだ。

カテゴリー:
タグ:
関連記事
SPECIAL
  • アサ芸チョイス

  • アサ芸チョイス
    スポーツ
    2026年06月24日 07:15

    ドジャース・大谷翔平の第二子誕生をめぐって、フェミニストを名乗る女性たちがSNS上で「多産DVだ」「年子出産は女性虐待だ」と騒いでいる。大谷夫妻は昨年4月20日に第一子誕生を報告、この6月20日に第二子誕生をアナウンスした。これら誹謗中傷コ...

    記事全文を読む→
    カテゴリー:
    スポーツ
    2026年06月24日 11:30

    一発出たら同点。3-7と4点をリードされて迎えた7回裏、二死満塁の場面。この日いちばんの勝負どころで、広島・新井貴浩監督がベンチから送り出した代打は捕手・石原貴規だった。結果は空振り三振。最大の山場でなぜ、より長打を見込める打者を送り込まな...

    記事全文を読む→
    カテゴリー:
    スポーツ
    2026年06月24日 13:30

    これはトレードのショーケースなのだろうか。そう思ってしまったのは、阪神タイガースの梅野隆太郎捕手が2軍から再昇格し、6月23日のヤクルト戦に即スタメン出場して攻守に高い能力を見せつけたことだ。1-0とリードした5回に二塁打を放ってチャンスメ...

    記事全文を読む→
    カテゴリー:
    注目キーワード
    最新号 / アサヒ芸能関連リンク
    アサヒ芸能カバー画像
    週刊アサヒ芸能
    2026/6/23発売
    ■650円(税込)
    アーカイブ
    アサ芸プラス twitterへリンク