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将軍・殿様の「正室と側室」奇妙な真実(4)高野山で最大の墓はお江の「一番石」

 徳川家康を継いだ2代将軍秀忠(ひでただ)の妻となって3代将軍家光を産み、徳川家最初の「御台所」となったお江(お江与(えよ))の墓は東京・芝の増上寺境内にあるが、供養塔が高野山金剛峯寺(こんごうぶじ)の奥の院の参道にもある。岡崎氏はそのお江の供養塔を見て巨大さに驚愕したという。

 高野山には信長、謙信、信玄など歴史上の人物の供養塔が20万基もある中で、お江の方の供養塔は、他のどの供養塔よりも際立って大きく、その高さは6.6メートルもある。ゆえに「一番石」と呼ばれているという。なぜそんなに巨大な供養塔が立てられたのか。その秘密は、3度の結婚を繰り返し、戦国一の美女とも言われるお江の産んだ兄弟間の確執にあった。

「お江は自分の子であるにもかかわらず、家光よりも弟の忠長(ただなが)を寵愛していました。たぶん不細工で陰気だった兄・家光より、忠長のほうがかわいらしかったのでしょう。一方、家光はその乳母だったお福(春日局)に守られ、結局は春日局が家康に長幼の序を訴えて忠長を蹴落とし、家光を3代将軍に押し立てるわけです。親父の秀忠はお江に頭の上がらない恐妻家で、当時は必ずしも長男が継ぐという制度になっておらず、自分も家康の3男から将軍になったので、お江の言うとおり3代目は忠長でいいかなと思っていたところがありますが、家康の裁定では引き下がらずを得ない」

 お江のあの巨大な供養塔は、嫡男の家光ではなく将軍になりそこねた忠長が建てている。供養塔の裏に回って見ると「駿河大納言忠長」と刻んであるという。お江に溺愛されてお江を慕っていたことがよくわかり、お江=忠長ラインと春日局=家光ラインの確執という歴史を裏付ける何よりの証拠となる。

「その後、忠長はしだいに乱行三昧となって、父の秀忠の死後、幽閉されていた高崎で切腹させられています。豊臣秀吉と伯母・茶々の息子の秀頼に嫁いだ姉の千姫からは、葵紋の硯箱など供養の品が届けられて、墓のある高崎の大信寺に今もあるのですが、兄の家光からのそうしたものは一切ない。家光はその母・お江の供養塔にも関わっておらず、葬式にも出ていません。自分は終生、尊敬していたおじいちゃんの家康のために日光東照宮を大改築し、みずからも東照宮の隣に霊廟を建ててそこに眠っています。もともと徳川家の菩提寺は芝増上寺で、母親のお江と夫である秀忠の墓も増上寺に立派な霊廟があったのですが、木製だった秀忠の廟は戦災で焼け、石製だったお江の宝塔は焼け残ったので、秀忠はその下に入って、今は夫婦の墓となっています」

岡崎守恭(おかざき・もりやす):1951年、東京都生まれ。早稲田大学人文科卒業。日本経済新聞社入社、北京支局長、政治部長、編集局長(大阪本社)などを歴任。歴史エッセイストとして、国内政治、日本歴史、現代中国をテーマに執筆、講演活動中。著書に『自民党秘史 過ぎ去りし政治家の面影』。

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