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伝説の「平成・春のセンバツ対決」成田VS広陵で後のプロ選手同士が熱闘!

 2007年の高校野球界は“BIG3”と呼ばれたプロ注目の3人が話題の中心となった。仙台育英(宮城)の150キロ右腕・佐藤由規(東北楽天)と成田(千葉)の快腕・唐川侑己(千葉ロッテ)、そして二刀流の怪物・大阪桐蔭の中田翔のことである。そしてこの3人が第79回春の選抜大会では勢ぞろいすることもあって、高校野球ファンにとって、開幕前から大注目の大会となっていた。

 抽選の結果、このBIG3のうち、大会初日にいきなり中田翔と佐藤由規が登場することに。中田翔の大阪桐蔭は快勝したものの、佐藤由規の仙台育英は1点差で惜敗してしまい、早くもBIG3の一角が崩れてしまった。そんな中で大会4日目に登場したのが唐川擁する成田である。対戦相手は過去に春選抜3度の優勝を誇る名門・広陵(広島)であった。この年の広陵は、後の夏の選手権で準優勝を飾ることになるほどの実力を秘めたチームであった。その主力メンバーは野村祐輔(広島東洋)-小林誠司(読売)のバッテリーに好打好守の上本崇司(広島東洋)、そして強打の土生翔平(元・広島東洋)など、後のプロ野球選手がズラリと顔を並べていたほど。対する成田はエース・唐川の右腕が頼みの綱という典型的な守りのチーム。さらにその唐川は大会直前の練習試合で右手中指を痛めてしまっていた。戦前の評価では広陵が総合力で一枚も二枚も上回っているとされたのである。成田としては守備陣が唐川をカバーして、是が非でも投手戦に持ち込みたいところであった。

 試合はその目論見通り、投手戦となる。だが、それは両軍の投手が相手打線を音なしに封じるという展開ではなかった。その象徴が1回表の広陵の攻撃である。ヒット1本と四球、死球で2死ながら満塁と唐川を攻め立てたのだが、このチャンスで6番・小林が三振を喫し、得点ならず。その後も両軍ともランナーを出すものの両投手が踏ん張ってあと1本を許さないという、守備で凌ぎ合う展開となったのだ。広陵は3回表の1死三塁で小林がスクイズ失敗、5回表の無死二、三塁も5番・福田耕二がスクイズ失敗で無得点。対する成田も4回裏の2死三塁を逃すと5回裏の1死一、三塁、8回裏の1死満塁はともに次打者が併殺打に倒れ、万事休す。9回裏の2死二、三塁という一打サヨナラという絶好のチャンスでも一ゴロに終わった。試合は2回表裏に仲良く点を取り合ったまま、1‐1の同点で延長戦へと突入したのである。

 延長戦に入ってもたがいの逸機は続く。広陵は11回表に内野安打1本と2死球で2死満塁まで攻め立てたがあと1本が出ず。対する成田も10回裏に1死満塁、続く11回裏にも無死一、二塁という絶好のサヨナラの場面でともに併殺打に倒れどうしてもあと1点が取れなかった。

 すると試合がついに動いた。12回表に広陵は1死から3番・土生の右中間への二塁打をきっかけに2死三塁とすると、途中から5番に入っていた上本健太の三塁内野安打が飛び出してついに勝ち越しに成功、接戦に決着をつけたのである。

 この試合、打っては広稜13安打(うち長打1)、5四死球、4盗塁。奪われた三振4。成田は12安打(うち長打2)、4四死球で盗塁0、奪われた三振は3。守っても広陵は失策1、成田は2と、数字上ではそれほど差がなかった。ただ、広陵は守っては4併殺を奪うなど、ここぞという場面で連係の取れたプレーがエース・野村をもり立てた。対する成田は8回以降、毎回得点圏に走者を進めたものの残塁の山を重ね、粘投の唐川を援護しきれなかった。そのわずかな差が勝敗を分けたと言えよう。

(高校野球評論家・上杉純也)=文中敬称略=

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