社会

秋津壽男“どっち?”の健康学「40代から増える男性の更年期障害。ホルモン量検査や投薬治療の必要はあるか」

 ここ数年「やる気が起きない」と訴える40~50代の男性が増えています。仕事や家庭が引き金となり、活力が失われていく。いわゆる男性更年期障害です。ただ、閉経前後に急に具合が悪くなる女性と異なり、男性の更年期障害は非常にゆるやかです。

 これは性ホルモンの減少が原因で、女性は閉経などで急激に下がるケースが少なくないのですが、男性の場合、男性ホルモンの一種であるテストステロンが時間をかけて半減するので、長期間に及ぶ可能性があります。

 ではここで、今回のお題です。男性更年期障害かどうかを知るために、血中の男性ホルモン量や身体症状、精神症状、性機能などを調べ、薬で症状を抑える人も少なくないですが、こうした治療は受けるべきか、しないほうがいいか、どちらでしょう。

 そもそも、男性ホルモン量を調べることに、私は意味を感じません。なぜなら、男性ホルモンは誰でも加齢とともに減るわけで、ホルモン量が低くなるのは当然だからです。その結果を見たところで、気分的な落ち込みに拍車がかかるだけです。自然に下がっている数値を、わざわざ見る必要もないでしょう。

 ここで、簡単なテストをしてみましょう。

AMSスコア

1.総合的に調子が思わしくない

2.関節や筋肉の痛み

3.ひどい発汗

4.睡眠の悩み

5.よく眠れず、しばしば疲れを感じる

6.いらいらする

7.神経質になった

8.不安感

9.身体の疲労や行動力の減退

10.筋力の低下

11.憂うつな気分

12.「絶頂期は過ぎた」と感じる

13.力尽きた、どん底にいると感じる

14.ひげの伸びが遅くなった

15.性的能力の衰え

16.早朝勃起の回数の減少

17.性浴の低下

 上記は、男性の更年期障害診断に広く用いられている「AMSスコア」です。17項目それぞれを、

「なし=1点」「軽い=2点」「中度=3点」「重い=4点」「非常に重い=5点」

 で診断してください。

 合計点数が26点以下は正常、27~36点は軽度、37~49点は中度、50点以上は重度の更年期障害とされます。

 また、最近の傾向としては、更年期障害が定年と重なる場合が少なくありません。逆に言えば、定年が存在しない自営業やフリーランス、あるいは定年後の目標が定まっている場合、更年期障害には見舞われずに済むわけです。

 中度や重度と自己診断された方は、医者を受診する前に、まず、次の目標を見つけてみてください。休日に趣味に没頭するなど日常生活を変えてみるのも、一つの手段です。サークルに入って仲間を見つける、運動を始めてみるなども、定年後の生き方に大きな意味をもたらしてくれます。

 古くからの友人と食事をしたり、魅力的な女性と仕事やデートをする、小遣いの範囲内で競馬や麻雀を嗜むなども、心身にいい刺激を与えてくれ、更年期障害をクリアするきっかけになります。

 男性更年期障害は、うつ状態、もしくはうつ病と変わりません。若い頃の元気がなくなり、自信を喪失した結果、落ち込みが進んでうつのような症状が出てくるのです。

 何度もお話ししてきましたが、精神薬を用いると、薬なしではいられなくなり、長い目でみて「パフォーマンスの低下=悪循環」から抜け出せなくなります。薬に頼るのは「最後の手段」としてください。

■プロフィール 秋津壽男(あきつ・としお) 1954年和歌山県生まれ。大阪大学工学部を卒業後、再び大学受験をして和歌山県立医科大学医学部に入学。卒業後、循環器内科に入局し、心臓カテーテル、ドップラー心エコーなどを学ぶ。その後、品川区戸越に秋津医院を開業。

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