社会

歌舞伎町ホテル清掃員の「ウィズコロナ」現場(3)入口に飾られた花束の意味

 新宿歌舞伎町のとあるカップルズホテルで清掃員をしている夏井英機氏(40代独身)は4月7日に緊急事態宣言が出され、一時自宅待機をホテル側から申し渡された。ホテルの清掃員がコロナ禍の現場を明かす手記の3回目は、久々にホテルから仕事を頼まれて見えた「変化」である。

      ※

 緊急事態宣言以後、飲食店やライブハウスの中には廃業するところがちらほら出始めた。もしかするとこのまま、うちのホテルも潰れるのかもしれない。大丈夫なのか。もしダメそうならウーバーイーツでもやるか。ただ、その前に、ホテルの様子を見てこようか。でも電車には今の時期乗りたくない。そこで私は知り合いに見に行ってもらうことにした。ゴールデンウィークの最中のことだ。ホテルの近所に住むそのホテルの常連利用客で友人の芸能プロ社長。年齢はほぼ変わらない彼とはたまに飲みに行く間柄だった。

「見にいったらね、工事してたよ。古かったもんね。よくあれでお金取れるなっていうぐらいに…」

 それを聞いて、「廃業するどころかやる気満々じゃないか」という頼もしく思う気持ちと、そう言われても仕方がないという2つの感情が浮かんだ。

 さて、GW明けの数日後、ホテルから「次の火曜日なんですけど夏井さん入れますか」と電話がかかってきた。家でひたすらゴロゴロしてふてくされていた私は、やっとこれで身体を動かせる!と、声を弾ませながら「もちろん大丈夫ですよ」と答えた。

「5月7日から再オープンしてるんですけど、お客さんが全然来ないんで、スタッフのみなさんローテーションで順番に一人ずつ入ってもらってるんですよ」

 それを聞いて私は意外に思った。夜のサービス嬢好きの人が我慢できずに裏でやっている女性を調達してきたり、自粛に耐えられなくなった若いカップルが詰めかけたりして、3月初め頃と同じぐらいには人が戻ってるんじゃないかと思っていたのだ。「わかりました」と答えたものの、今度は6時間の勤務中、一部屋も掃除しないことになるかも、と覚悟して火曜日の日バイトに入った。

 5月も10日を過ぎているからか、午後6時前なのにまだ明るく気温も約20度と暖かい。人通りはそこそこ戻っていたが、ほぼ全員がマスク姿。最寄りの中央線某駅そばの横断歩道で、マスクをしていない若い男性がおり、自分が家にこもっていたためか恐怖心が変に増幅し、感染しないか思わずビビる。電車内はすいていたが、貸し切りというほどではなく、人の動きが戻ってきているのを感じ、何だかほっとした。

 ホテルのある歓楽街には客引きはざっと6、7人。マスクこそしているが、やや活気づいている。ちょっと早すぎやしないか、自分のことを棚に上げて思ってしまった。歩いて数分でホテルに着く。入口には出入りを隠すよう塀があるのだが、塀には〈再オープン〉と書かれた花束が立てかけてあったが、送り主の名前がない。どうやら、客の注意を引くため、店が自主的に飾ったものらしかった。私は思った。〈こんなの出して客が来るぐらいなら世話ないよ〉やっぱり客足は戻っていないのかもしれない。

が、店の入口に立った私は、それとは別の感情がこみ上げてくるのを感じていた。仕事が久々に出来る喜びで、身も心もいっぱいになったのだ。

(写真はイメージ)

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