社会
Posted on 2020年07月26日 17:59

歌舞伎町ホテル清掃員の「ウィズコロナ」現場(終)荒れた部屋続々で疲労困憊

2020年07月26日 17:59

 新宿歌舞伎町にあるカップルズホテルで清掃員をしている夏井英機氏(40代独身)。緊急事態宣言が発令された4月7日から1カ月あまりがたった5月半ば、ホテルに久しぶりに出勤した彼の見たものとは─。

     ※

 5月12日、一カ月ぶりの仕事に私は、なんだか心躍っていた。久々に通勤して身体を動かすだけで、身体全体に血が巡って元気になるようなそんな気がしたのだ。在宅時よりずっと頭が回転し、気分も高揚。頭は身体の一部だから、身体を動かすことは大事なことなのだ。

 タイムカードを押し、二階の待機室へ。どうせお客さんなんて誰も入ってないだろう。でも一応、フロントに電話しておくか─。すると意外なことに掃除すべき部屋があった。人の気配がそこここに残る部屋に入り、こんな時でも人って来るんだと、妙に感慨深かった。テーブルの上には緊急事態宣言以降に作られたラミネートでカバーされた注意書のようなものが。「新型コロナウイルス感染予防対策」と記され、ロビーに消毒液を設置してあるので利用をお願いしている旨、従業員にマスク着用を義務づけ健康管理を徹底している旨、部屋の中にアルコール手拭きを置いているので使ってほしい旨が記されていた。

 ゴミを片付け、ベッドメイキングして風呂を拭き終わると一部屋30分ほど。ひとり二役で、なおかつ1ヵ月ぶりだということで体の消耗が激しい。でも身体を動かすのはひたすら気持ちが良い。フロントに終了の電話をする。掃除部屋はあと2部屋だという。これをやりきって後は読書でもするか。そんなふうに状況を気軽にとらえていた。

 が、次に掃除をする部屋は酒盛りをした後のように荒れ放題だった。500mlの缶入りチューハイが飲み干した状態でテーブルに6本。酒の量からして若者が乱痴気騒ぎ的に部屋を利用しているということが推測できた。使用済みのグッズがあったり、ベッドや風呂を使っていたり。部屋がイレギュラーに荒れていて、派遣サービス嬢を呼んだ部屋とはかなり様相が違う。散らかされた部屋は性的行為さながらに衝動的、本能的なものを感じさせグッタリする。私の中の本能を刺激して疲れてしまう、ということか。

 この後、清掃を担当した部屋は続けざまに荒れ放題だった。受付のパネルを見ると利用できる部屋は過半数。通常の二人一部屋での清掃なら、ゆっくり清掃しても、あと2時間残して、清掃が完了しそうだった。が、そうはいかず結局、勤務時間ギリギリまで身体を動かしまくって13部屋。つまり二人で掃除すると年間で最も忙しい時期と変わらず、最後はバテてしまった。こんなにやったのに、ふだんは掃除をしない男性社員が、私が帰る頃、部屋の掃除を始めていると聞いてガックリした。一人では終わり切らないぐらいに掃除部屋があったということを知ったからだ。

 6時間前は、仕事ができる喜びで身も心も満ちあふれていた。なのに、終わってみると、心躍るような感覚はとっくに霧散していた。疲労困憊していた。

 0時すぎにタイムカードを押して、退勤。ホテルを出ると5人ぐらいの20代の若者がいた。マスクをせず泥酔している。そのままホテルに入っていこうとするが、白い壁の手前で女の子がひとりうずくまっていた。一緒に連れ込もうとしたのだろうか。

 さらに歩いて、歓楽街を抜けていく。客引きが3,4人戻ってきていたが、表情が一変。4月7日のような悲壮感はすでになかった。駅まで数分の間、ちらほら若者がいたが、酔ってマスクをしてない者も目立った。帰りの電車では、途中の停車駅に停まり、扉が開いた途端に、やはり20代の若い男性が電車に乗るのをやめ、ホーム上で嘔吐していた。

 ステイホームもいい加減、限界なのかも知れない。先の見えない自粛に疲れている人が増えているようだ。耐えきれずに街に飛び出した人たちがクラスターになったりするのだろうか。私は暗澹とした気持ちになりながら、帰途を急いだ。

(※緊急事態宣言は5月25日に解除された)=写真はイメージ=

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