芸能
Posted on 2013年12月04日 09:58

日本レコード大賞 炎の四番勝負!<第1回>「1972年~ちあきなおみVS小柳ルミ子~」(3)

2013年12月04日 09:58

20131205m

 昨年5月に「ちあきなおみに会いたい。」という文庫を出した直後、筆者は初めて小柳ルミ子に会う機会を得た。その日は「女優」の部分でのインタビューだったが、やはり“後日談”として「世紀の番狂わせ」を聞いておきたい。

 その問いに、偽らざる感情があらわになった。

「私は絶対に『瀬戸の花嫁』が大賞だと確信していたんです」

 レコ大の会場では、歌い終えた候補者は客席に座ってスタッフと結果を待つ。番組が始まって間もなく、旧知の審査員がこんなことを耳打ちしてきた。

「ルミちゃんは『歌謡大賞』を取ったからいいよね」

 にこやかな物言いながら、それは非情の宣告であった。すでに“勲章”を手にしているから、レコード大賞を逃しても大丈夫だろうというニュアンスだ。

「そう聞いた瞬間、私はショックで腰が抜けるかと思いました。だって、これから発表なのに‥‥」

 その“暗示”のままに、司会の高橋圭三が読み上げた大賞曲は「喝采」であった。ルミ子は悔しさをこらえ、もうひとつの舞台である「紅白」の会場へ静かに移動する。

 そばにいた平尾昌晃は、一瞬は「やられた!」と思ったが、ちあきが歌う「喝采」の素晴らしさも認めていたため、さほど悔しさは感じなかったという。

「後から考えれば、ルミ子はあれで良かったと思う。デビュー曲が大ヒットして、渡辺プロとしても真剣なプロモーションをやる必要がなかった。でも彼女はA型特有の負けず嫌いな性格だから、レコ大を獲れなかったことで会社も含めて初めて危機感を持った。そのことで『星の砂』や『お久しぶりね』といった大ヒット曲をコンスタントに出せたんだと思う」

 もう1人の「A型」が、壇上に並んでいた五木ひろしである。こちらも敗れた悔しさを隠さないタイプであり、平尾は翌年、五木に大賞を獲らせるべく書いた「夜空」でみごとに満願を成就する。

 歌謡界の黄金期たる70年代の華々しいデッドヒートであるが、中継を担当した砂田実は、どう見つめていたのだろうか──。

「TBSは運営には関わっても、選考には口をはさまない。ただ、個人的には、ちあきの比類なき歌唱力に軍配を上げたかった」

 それから約2年後の74年10月22日、砂田は再びちあきと向き合った。中野サンプラザで開かれた初のリサイタルに、演出を依頼されたのである。

 砂田は、自分が担当するなら「オリジナルの新しい曲」が欲しいと思った。そして熱海で耳にした娼婦の苦労話を思い出し、その原案をもとに、後輩だった松原史明に詞を書かせた。それがちあきのライブにおける傑作と名高い「ねえあんた」である。

 ちあきとともに頂点を争った4人は、今なお歌舞台で歴史を重ねている。ただ1人、あの日に〈喝采〉をつかんだちあきだけが休眠を続けたままだ──。

カテゴリー:
タグ:
関連記事
SPECIAL
  • アサ芸チョイス

  • アサ芸チョイス
    社会
    2026年09月14日 11:30

    AIは本当に人類を終わらせるのか。専門家のとある主張が世界を震撼させている。その「AI終末論」は、AI開発企業アンソロピックに勤めていた元研究員、ジェイコブ・コクソン氏によるもの。Xで「AI研究関係者の多くが、AIは今後10年以内に人類を破...

    記事全文を読む→
    カテゴリー:
    タグ:
    事件
    2026年09月16日 20:30

    「ゾンビたばこ」と呼ばれる指定薬物「エトミデート」は、広島カープに大きな衝撃を与えた忌まわしいブツだ。元広島カープの羽月隆太郎氏にこれを譲り渡したとして医薬品医療機器法違反の罪に問われた会社役員・滝口涼介被告の初公判が9月16日に広島地裁で...

    記事全文を読む→
    カテゴリー:
    社会
    2026年09月17日 07:15

    20世紀最大級のミステリーと言われてきた、イギリス・スコットランドのネス湖に生息するという未確認動物(UMA)の「ネッシー」に、再び熱い視線が注がれている。いったいなぜか。一時期は目撃情報が激減し、専門家からは死亡説や、人間の活動を警戒して...

    記事全文を読む→
    カテゴリー:
    タグ:
    注目キーワード
    最新号 / アサヒ芸能関連リンク
    アサヒ芸能カバー画像
    週刊アサヒ芸能
    2026/9/15発売
    ■650円(税込)
    アーカイブ
    アサ芸プラス twitterへリンク