社会
Posted on 2022年09月26日 09:59

東京都「首都直下地震等被害想定」の大ウソを暴く〈番外編〉虎の子の資産にもたらすリスク(3)新耐震基準の「本当の意味」とは

2022年09月26日 09:59

 新耐震基準は「大規模地震(震度6強~7程度の揺れ)に対しても、人命に危害を及ぼすような倒壊などの被害が生じないことを目標とした構造基準」であり、震度5強程度の揺れに対しても「ほとんど損傷しない構造基準」と定義されている。

 また、その後、木造の建物については、地盤に応じた基礎の設計、接合部への金具の取り付け、偏りのない耐力壁の配置などを定めた、いわゆる「2000年基準」によって、耐震強度がさらに強化された。

 なお、新耐震基準に該当する建物は、鉄骨鉄筋コンクリート造、鉄筋コンクリート造、木造のいかんを問わず、「おおむね81年以降に建てられた建物」と考えていい。ただし、81年以降に建てられた建物であっても、建築確認申請が81年6月1日(新耐震基準施行日)より前に行われた建物は、旧耐震基準の建物に該当するので要注意である。

 だが、前々回(9月15日配信)でも指摘したように、95年の兵庫県南部地震(阪神・淡路大震災、最大震度7)では、新耐震基準で建てられた建物のうち、約8%が倒壊や崩壊を含む「大破以上」の被害を受け、約17%が「中破以上」の被害を受けている。

 したがって、2000年基準で建てられた木造の建物も含め、地震に強いとされる新耐震基準の建物といえども、以下のようなリスクを想定しておかなければならないのである。

 第一に、震度6強~7程度の揺れに襲われた場合、新耐震基準の建物といえども、倒壊や崩壊を含む、大破以上の被害を受ける危険性がある。この点は長周期パルスや長周期地震動、側方流動や免震ゴム破断などに襲われた場合の、タワーマンションや免震マンションでも同じである(6月10日、12日、14日、16日、20日、22日、24日配信の本連載本編記事参照)。そしてこのような建物被害が生じた場合、建物の中にいる人の命や安全は保証の限りではなく、建物の資産価値もゼロとなってしまう可能性がある。

 第二に、新耐震基準の建物であっても、軟弱地盤の上に建っている、柱や梁や耐力壁などの躯体部分が経年劣化している、手抜き工事などで施工が正しく行われていない、といったケースでは、震度5強程度の揺れでも、建物の資産価値がゼロとなる補修不能な被害が生じる危険性がある。また、特に木造の建物については、仮に建物が無事だったとしても、地震後の火災や延焼によって焼失してしまう恐れがある。さらに、建物から脱出できないほどの損傷を受けた場合には、中に取り残された人が焼死してしまう危険性もある。

 ちなみに、16年の熊本地震(最大震度7)でも、新耐震基準で建てられた建物の約15%が、大破以上の被害を受けている。要するに「新耐震基準の建物であれば、少なくとも命だけは助かる」とされる最低ラインすら、現実的には怪しいのだ。

(森省歩)

ジャーナリスト、ノンフィクション作家。1961年、北海道生まれ。慶應義塾大学文学部卒。出版社勤務後、1992年に独立。月刊誌や週刊誌を中心に政治、経済、社会など幅広いテーマで記事を発表しているが、2012年の大腸ガン手術後は、医療記事も精力的に手がけている。著書は「田中角栄に消えた闇ガネ」(講談社)、「鳩山由紀夫と鳩山家四代」(中公新書ラクレ)、「ドキュメント自殺」(KKベストセラーズ)など。

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