スポーツ

新日本プロレスVS全日本プロレス<仁義なき50年闘争史>「新展開!長州と藤波が団体の垣根を越えた」

 1985年暮れにジャイアント馬場とアントニオ猪木が水面下で握手、全日本プロレスと新日本プロレスの間に引き抜き防止協定が結ばれたことで、86年は両団体がそれぞれの活動に専念することができた年だ。

 新日本と前田日明率いるUWFの開戦は刺激的だった。「最強」を謳う新日本のストロング・スタイルと「これが本物のプロレス」とロープにも飛ばずに打撃、関節技を主体にして、勝敗のみに固執するUWFスタイルは嚙み合わず、いつプロレスの範疇を越えてもおかしくない危険を常にはらみ、その刺激にファンは熱狂した。

 当時のプロレスには本格的な打撃の技術がなかったために新日本の選手はUWF勢のキックを防御できずにサンドバッグ状態にされていたが、そうした中で頭角を現したのは全日本出身で〝受けのプロレス〟ができる越中詩郎。高田にボコボコに蹴られても立ち上がり、遂にはヒップアタックをヒットさせることに成功。越中VS高田はジュニアの名勝負になった。

 そして、藤波辰巳(現・辰爾)である。藤波は真正面からUWF勢のファイトを受け入れる懐の深さで、新日本のスタイルとUWFスタイルを融合させた。

 6月12日の大阪城ホールにおける藤波と前田の一騎打ちでは、いつもは新日本に敵意剝き出しの前田が「プロレスというものの総合格闘技としての奥深さを、今日の藤波さんとの試合で示したいと思います」と語って試合に臨み、前田が仕掛けるUWFスタイルと藤波の従来のプロレスが自然にスイングして〝緊張感のあるプロレス〟が成立。最後は両者KOで決着はつかなかったが、1万3250人の大観衆を熱狂させた。

 その後、前田は10月9日の両国国技館でマーシャルアーツのドン・ナカヤ・ニールセンと初の異種格闘技戦に勝利。同日行われた猪木と元プロボクシング世界ヘビー級王者レオン・スピンクス戦に内容で勝ち、新格闘王の称号を得た。

 この新格闘王誕生の日、新時代のエース候補・武藤敬司が1年のアメリカ修行を終えてリングから挨拶。新日本にとって86年は猪木から藤波、前田、武藤らの新時代に移行しつつあることを示す1年だった。

 85年は長州力率いるジャパン・プロレスとの対抗戦で大躍進して、日本テレビの中継もゴールデンタイムに復帰した全日本は、86年も対抗戦を継続したが、長州力の立ち位置が変わった。4月5日の横浜文化体育館でスタン・ハンセンのAWA世界ヘビー級&PWFヘビー級の2冠王座に挑戦して反則勝ちに。ルールによってAWA世界は移動しなかったが、第11代PWF王者になったのだ。

 これは事件と呼んでもおかしくなかった。馬場を初代とする同王座をその後に獲得した日本人レスラーは皆無。ジャンボ鶴田も天龍源一郎も手にしていなかったからである。つまり長州のPWF王座奪取は、馬場が長州を後継者として認めたとも解釈できるのだ。

「馬場が長州を後継者に指名か!?」と騒がれた3日後の4月8日、世間一般も驚かすニュースが流れた。日刊スポーツが1~3面ブチ抜きで昭和の大横綱・輪島大士の全日本入団をスクープしたのである。

 輪島の全日本入団は4月13日にキャピトル東急ホテル(現ザ・キャピトルホテル東急)で行われ「裸(力士)になって、裸(4億円の借金)になったのだから、もう一度、裸(プロレスラー)になって頑張りたいと思います」と所信表明を行った輪島は、馬場に伴われてすぐさま渡米。ハワイ、セントルイス、ニューヨーク州バッファロー、ノースカロライナ州シャーロットで英才教育を施されて、11月1日に故郷の石川県七尾総合市民体育館で、タイガー・ジェット・シン相手に日本デビュー戦を行った。

 86年の全日本はPWF王者・長州、インター王者・鶴田、UN王者・天龍、そして輪島という最高の陣を整えたのである。

 そして迎えた87年。平穏だった日本プロレス界に一石を投じたのが長州だ。

 1月17日、徳山市体育館でカート・ヘニング相手にPWF王座防衛に成功した後、若林健治アナウンサーの「長州選手の今年の抱負はズバリ何ですか?」の問いに「まあ、ジャパンがこの世界で生きていくためには‥‥ジャンボなり、天龍なり、藤波なりをみんな倒さなきゃいけないから、まあ一生懸命頑張ります」と、日本テレビの生中継で藤波の名前を出したのだ。

 これに対して2月2日のテレビ朝日「ワールド・プロレスリング」で古舘伊知郎アナウンサーが「先だって、あの長州力が他局の放映で〝藤波と戦いたい〟と発言しましたが、それに対する回答を2月5日の両国国技館の会場で出すことになりました」と語ると、ゲスト解説者の山本小鉄が「呼びかけてくれたんだから、答えを返してあげないといけないと本人は言っているわけですけど、どういう発言をするのか注目したいですね。楽しみですね」と続けた。この唐突な展開の裏には─。

小佐野景浩(おさの・かげひろ)元「週刊ゴング編集長」として数多くの団体・選手を取材・執筆。テレビなどコメンテーターとしても活躍。著書に「プロレス秘史」(徳間書店)がある。

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