芸能

泉谷しげる「必要なのはボランティア精神だと思うよ」/テリー伊藤対談(4)

テリー 泉谷さんはよく「仕事は自分で作れ」って言うじゃないですか。

泉谷 そうだね。

テリー でも「アサ芸」の読者には、例えば定年になって、まだ働きたいんだけど仕事がないっていう人が意外と多いんですよ。

泉谷 そりゃあ年を取ってきたら、仕事が減るのは当たり前だよ。50、60過ぎの芸能人だって、ここ最近、どれだけの人が大手の事務所から独立してるか。今はテレビも金がなくなってきてるし、映画だってケチだからさ。若い奴がいっぱい仕事してるのは、ギャラが安いからでしょう? 年寄りはギャラが高いんだよ。

テリー テレビは特に、昔と比べたらギャラ3分の1ですからね。

泉谷 だから、仕事をしたいなら、まず「ノーギャラでもいい」ぐらいのつもりでやらないとね。俺も自分の仕事はほとんどノーギャラだと思ってるよ。それでフェスを企画したり、アート展をやったり、ライブハウスを回ったり、いろいろやってるんだけど。それだって最初から金儲けしようなんて、これっぽっちも思ってないよ。

テリー でも、それだと普通の人は生活に困っちゃいますよね。

泉谷 そうだね。俺、サラリーマンやったことないから、そういう人の仕事の作り方っていうのはよくわかんないけどさ。でも、奉仕の心っていうか、そういう感覚で仕事をしろっていうのはどんな職種でも変わらないと思うけどね。前にフェスを主催した時に、ある歌手が「泉谷さん、出たい」って言ってきてさ。

テリー へぇ、いくつの人ですか。

泉谷 その時、50代後半ぐらいかな。とにかく〝超〟がつく有名な女性歌手。あえて名前は出さないけど。

テリー 気になりますね。

泉谷 だから、「いいですよ。ぜひ出てください」って言ってさ、「ギャラいくら?」って聞いたら「500万」だって言うんだよ。フェスで500万って勘弁してくれよ(苦笑)。

テリー 普通はいくらぐらいなんですか。

泉谷 フェスっていうのは10万とかさ、みんな安く出てもらうから成立するんですよ。ところが、その歌手「500万がダメなら、300万で」だって。ひとケタ違うんだよ! そういう感覚のズレね。そんなこと平気で言うような奴に仕事なんか来るわけないですよ。

テリー そうか。確かにお金優先で考えると、なかなか仕事は見つからないかもしれないですね。

泉谷 必要なのはボランティア精神だと思うよ。それは俺たちみたいな仕事に限らず、サラリーマンだろうが飲食店だろうが、根本は全部同じなんじゃないかと思うけどね。

テリー これから泉谷さんは、どう生きていこうと思ってるんですか。

泉谷 今ライブハウスに行くとさ、ライブハウスのオヤジって、昔から俺のファンだったって言う奴が多くて、男のくせに俺に会うと目をキラキラさせてるわけ。

テリー それはみんなあこがれですよ。

泉谷 だから、そいつらのために「化け物をやり続けなきゃいかんな」と決意を新たにだよ。「こうすれば元気でいられるかもしれない」って、見本みたいなものは見せられればと思ってるけどね。

テリー 何か夢はあるんですか。

泉谷 夢? 夢はもうとっくに叶っちゃってるから。あとは、それをどう維持していくというか、管理していくというか、それだけだよね。疲れないように、適当に怠けながら、歌詞カードを見ながら(笑)。やっぱり、いい加減が大事だよ。

テリーからひと言

 ほんと泉谷さんは昔から何にも変わらないな。アーティストとして化け物を目指すだけじゃなく、女性に対しても化け物でいてほしいね。

ゲスト:泉谷しげる(いずみや・しげる)1948年、青森県生まれ。1971年、アルバム「泉谷しげる登場」でデビュー。翌年のシングル「春夏秋冬」が大ヒット。2013年にはNHK紅白歌合戦に初出場した。俳優としても「土曜ワイド劇場『戦後最大の誘拐・吉展ちゃん事件』」(テレビ朝日系)、「金曜日の妻たちへ」「ケイゾク」(以上TBS系)、「Dr.コト-診療所」(フジテレビ系)など多くのドラマ・映画に出演。また「北海道南西沖地震」「長崎・雲仙普賢岳噴火災害」「阪神・淡路大震災」「東日本大震災」などの際に行ったチャリティ活動はライフワークに。現在「泉谷しげる全力ソロライブ90分」を全国のライブハウスで敢行中。

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