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記事全文を読む→羽生善治の「七冠在位」期間は167日…「勝率1%」の絶望から蘇った藤井聡太八冠が更新するには…
日本将棋連盟・羽生善治会長の七冠時代を知る「羽生世代」なら、1993年のサッカーW杯アジア予選「ドーハの悲劇」を思い出したのではなかろうか。
それはあのドーハの悲劇のように「勝敗が決まったからトイレに行こう」と立ち上がったところだった。事実、王座戦第4局の勝敗を見届ける立会人達も永瀬拓矢九段の勝ちを確信し、モニターを見ていた控室から対局会場に向かっていたという。
121手でAIが叩き出した永瀬九段の勝率は98%。永瀬九段には棋盤の先に勝ち筋と永世王座が見えた…はずだった。ところが対局を中継していたABEMAの解説者・木村一基九段も視聴者も二度、驚きの声を上げる。
122手で藤井聡太八冠は手持ちの「金」で盤上の「桂馬」を狙わず「銀」を手に取り、14歳にプロ入りしてからの研究仲間だった永瀬九段の「出方を待つ」5五銀の一手に出た。素人の視聴者からは、藤井八冠が「詰んだ」とため息が漏れ、AIも藤井八冠の勝率1%、永瀬九段の勝率99%の予想に。
ところがこの手を見た木村九段は、藤井八冠が「勝負に出ましたね」と論評する。次の手で永瀬九段が順当に指せば投了、ミスをすれば藤井八冠が攻勢をかける心理戦に打って出たのだった。
ほぼ盤上の中央に置かれた銀の威圧感に引きずられたのか、永瀬九段は1分将棋となった残り数秒で、歴史に残る運命の123手「5三馬」という悪手を打ってしまい、木村九段は悲鳴のような声を上げた。
対局をリアルタイムで見ている視聴者は人工知能による「最善手」を知っているが、両者は1分で戦局を分析、3手も5手も先を予想した上で最善手を打たなければならない。たった一度のミスで、永瀬九段の勝率は99%から9%へと急降下。その後、悪手に気が付いた軍曹・永瀬九段の、天を仰いだりゲンコツで自分の頭を叩く悶絶ぶりが、残酷なまでに中継映像に映し出される。
翌12日のワイドショーをハシゴ出演した藤井八冠の師匠・杉本昌隆八段は、
「永瀬さんは最善手の4二金を打つつもりだったんでしょうが、残り数秒で揺らいだ。その最善手だと数手先が読めないことに気が付いたのでしょう」
永瀬九段を天国から地獄に叩き落とした60秒を、そう代弁した。対局開始から10時間以上経過しても驚異の集中力と100手先を読む藤井八冠の存在そのものが、ジワジワと歴代タイトルホルダー達の思考を狂わせる。
羽生会長の七冠在位は167日。この在位期間記録を更新するにはまず、年内に予定されている竜王戦で防衛しなければならない。さらに年明けの王将戦、棋王戦と続く。連敗しない藤井八冠の在位期間はいつまで続くのか。
(那須優子)
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