芸能

立川志らく「『政治に興味ない』とつぶやいた真意」/テリー伊藤対談(3)

テリー 振り返ってみて、談志師匠はどういう方だったんですか。

志らく みんな天才とか言いますけど、やっぱり狂人ですね。すべてが狂っていて、まともな思考ではない。だから、いい時に死んでますよね。今みたいにコンプライアンスがうるさい世の中だったら受け入れられないと思います。

テリー のたうち回ってますよね。

志らく それこそ談志は元祖〝逆張り〞だから。今だったらSNSで袋叩きになってるでしょうね。で、謝罪はする人じゃないから。

テリー そういう人を受け止める世の中じゃなくなってきてますよね。志らく師匠も報道のコメンテーターや、あと朝の番組でMCもされてましたけど、それは感じるんじゃないですか。

志らく ものすごく感じます。私、2016年ぐらいからコメンテーターを始めて、まだ10年もたってないんだけども、明らかに最初の頃と違いますよね。

テリー この前もSNSの「政治には興味ない」って投稿が炎上しましたよね。

志らく 軸足を常に落語に置いておかないとダメだなと思ってるんですよ。最初にコメンテーターなんかでたくさんテレビに出るようになった時に、「まだ落語があるから別に番組降ろされてもいいや」って思ってたんです。だから、何でも平気で言えたんですね。だけども、テレビに出る回数が増えてくると、スタッフだとかスポンサーに迷惑をかけちゃいけないっていうのが、だんだん出てくるじゃないですか。別に自分はいいんだけども、番組や事務所にも迷惑がかかるからって。

テリー わかります。

志らく そうやって、いろんなものに忖そん度たくするようになってきて、テレビに出る時間の方が多くなってくると、軸足が落語から抜けちゃう場合がある。そうすると「何のためにやってるんだろう」っていうことになって、とにかく「俺は落語家なんだから」っていう方向に戻すんですね。だから、思わず「政治なんか興味がないんだ」ってポーンと出ちゃうのは、「いや俺は落語家で、落語に興味があるんだよ」っていうことなんです。

テリー いちばん興味があって、好きなのは落語だと。

志らく 以前もラサール石井さんから、「何でそんなに自民党が好きなの?」ってコメントが来たんですけど、好きじゃないですよ。普段、自民党のことなんて考えたこともないし、立憲民主党や共産党も同じ。新聞も取ってなければ、ニュースはヤフーで見るぐらいで、落語家は政治のことなんか茶化すだけだから。それは「落語に軸足があるから」っていうことなんです。

テリー 言い換えれば「落語家として政治に興味がある」っていうことですよね。

志らく そうですね。だから、例えば税金が上がる下がるには興味があるけれども、それについて深く研究はしてませんよと。興味ないし、研究もしてないけど、「言いたいことはあるよ」ということです。

テリー それを許せないっていう人が結構いて、「テレビで政治を語るならもっと勉強しろ」って言うんですよね。僕はテレビのコメンテーターは中学2年生のレベルでいいと思ってるんですけど。

志らく それでいいんですよね。あれ、言っちゃえば井戸端会議ですから。「誰々さんが殺されました。続いては最近流行のスイーツです」なんて、まともな感覚ではやってられないですよ。

テリー そりゃ、そうだ。

志らく その井戸端会議を見て、「こいつレベルの低いこと言ってるな」とか「この人、こんなことまで知ってるんだ」って楽しんでもらうのがテレビ。専門的な知識は専門家に聞けばいいんですよ。

ゲスト:立川志らく(たてかわ・しらく)1963年、東京都生まれ。大学4年時に立川談志に入門。二つ目時代から兄弟子の「談春」と「立川ボーイズ」として活動し、深夜番組に出演するなど注目を集める。1995年、真打昇進。映画と古典落語を合体させた「シネマ落語」の創作、映画・演劇の作・演出・監督を務めるなど多方面で活躍。2016年10月より「ひるおび」(TBS系)にコメンテーターとして出演し、2017年上半期のブレイクタレント部門1位に。最新著書「師匠」(集英社)発売中。

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