スポーツ

新日本プロレスVS全日本プロレス<仁義なき50年闘争史>「SWSプレ旗揚げ翌日に馬場と猪木が30周年!」

 1990年の日本プロレス界は、春から地殻変動を起こした。5月に異業種のメガネスーパーが、70億円の軍資金をバックに新団体SWSを設立。新日本プロレスと全日本プロレスが協調路線を強化して対抗するという図式になったのだ。

 トップスターの天龍源一郎以下、選手、レフェリー、スタッフを含めて14人もの離脱者を出した全日本は存亡の危機に立たされたものの、タイガーマスクから素顔になった三沢光晴、川田利明、小橋健太(現・建太)らが超世代軍を結成して、ジャンボ鶴田に対抗することで息を吹き返した。

 新日本は武藤敬司、蝶野正洋、橋本真也の闘魂三銃士が台頭。そして前年6月16日に参院選出馬に伴って代表取締役社長の座を坂口征二に譲り、取締役顧問になったアントニオ猪木が7月17日の臨時株主総会で代表取締役会長に就任。佐川急便の全面バックアップを受けて、名実ともに新日本のオーナーになったのである。

 新日本と全日本の協調路線は、全日本のジャイアント馬場社長が坂口社長を信頼していたことからスタートしたもので、猪木の復権によって終了となった。

 猪木は全日本との関係について「新日本設立以来の競争団体であり、本質的には企業戦争の1つということを十分認識した上で対処していかなくてはならないけど、馬場さんと話し合える部分では、これからも前向きに話し合っていく」と語り、以前のように敵対関係に戻ることはなく、良好な関係は維持された。

 1990年9月30日は馬場と猪木が東京・台東体育館で同日デビューしてから30年。それぞれの30周年記念大会は両団体の協力のもとに開催されたのだ。

 その前日の9月29日、SWSが天龍の故郷・福井でプレ旗揚げ戦を行ったことも老舗の両団体を大いに刺激したに違いない。 

 まず午後3時から新日本が横浜アリーナで「アントニオ猪木メモリアル・フェスティバルIN横浜アリーナ」を開催。セレモニーにはルー・テーズ、ニック・ボックウインクル、タイガー・ジェット・シン、ジョニー・パワーズ、ビル・ロビンソン、ウイリエム・ルスカ、ヒロ・マツダ、スタン・ハンセン、アンドレ・ザ・ジャイアント、ジョニー・バレンタインの往年のライバル10人が駆けつけたが、仁義なき引き抜き戦争によって81年5月に全日本に移籍したシン、同年12月に全日本に移籍したハンセンの2人は全日本の承諾がなければ呼ぶことができない選手。

 9年4カ月ぶりに新日本に登場したシンはセレモニーだけでなく、大会のメインにも出場。過去の因縁を超えて猪木&シンというコンビが実現した。対戦相手は当時の新日本の最強外国人ビッグバン・ベイダーと81~83年に国際軍団としてラッシャー木村、寺西勇と〝打倒! 猪木〟に情熱を燃やしたアニマル浜口のコンビだ。

 猪木は9月に中国で2試合したものの、国内マットは2.10東京ドーム以来約7カ月半ぶり。それでもシンの好フォローを受けてベイダーにバックドロップ、腕折り、浜口に弓矢固めなど闘魂健在を見せつけ、最後は浜口に延髄斬りを炸裂させて30周年を自らの勝利で祝った。

 なお、シンはこの大会を機に全日本から新日本に円満にUターンした。

 午後6時30分からは全日本プロレスが後楽園ホールで興行。特に「30周年」と銘打つことなく「ジャイアント・シリーズ」第2戦として開催したところがいかにも馬場らしい。

 それでも会場は祝福ムードに包まれた。第3試合終了後に記念セレモニー。元子夫人の花嫁衣裳を仕立て直した「鳳凰ガウン」で馬場がリングに登場すると、館内は大・馬場コール。日本テレビの若林健治アナウンサーによる「激闘30年の軌跡」が流され、選手を代表して三沢がお祝いのメッセージ、ジャンボ鶴田と大峡正男営業部長が花束を贈呈。さらにファン代表からプレゼントが贈呈された。

 試合では馬場とアブドーラ・ザ・ブッチャーが、これまた恩讐を超えて初タッグを結成。かつて新日本で最強外国人の座を賭けて激闘を展開したスタン・ハンセンとアンドレ・ザ・ジャイアントのコンビと激突だ。

 223センチのアンドレと209センチの馬場の注目の大巨人対決はタックル合戦、アンドレのヘッドバットに対して馬場はサッとバックを取ってフルネルソン‥‥と、わずかな時間だったが、見応えのある攻防。

 10分過ぎにブッチャーが凶器を手にすると馬場が取り上げて阻止。ハンセンとアンドレが馬場めがけてブッチャーを投げると、馬場が16文キック! 結果的に仲間割れとなり、最後はアンドレがエルボードロップでブッチャーをフォールして馬場は30周年記念試合を勝利で飾ることはできなかったが、アンドレと握手。

 シンが新日本にUターンしたように、この大会を機にアンドレは円満な形で新日本から全日本のレギュラー外国人選手になった。

小佐野景浩(おさの・かげひろ)元「週刊ゴング編集長」として数多くの団体・選手を取材・執筆。テレビなどコメンテーターとしても活躍。著書に「プロレス秘史」(徳間書店)がある。

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