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「やっぱり映画っていいなあ」 ー神様はバリにいるー

──神様はバリにいる──

●ストーリー 婚活ビジネスに失敗した元起業家の祥子は失意のままバリ島へ。そこで一見ヤクザ風の日本人大富豪“アニキ”と出会い、人生が一変。●監督/李闘士男 出演/堤真一、尾野真千子ほか 配給会社/ファントム・フィルム ●1月17日より新宿バルト9ほかで全国順次公開。

 最近のテレビでよく放送されている「世界のこんなところに日本人──」みたいな番組は、僕も嫌いではない。見知らぬ土地で奮闘努力して、今に至る日本人の涙と感動のドラマ。予定調和とわかっていても、つい見てしまうね。そんな延長線上で楽しみたいのが「神様はバリにいる」だ。

 とはいえ、アジアのリゾート地バリ島で、露天商から大富豪に成り上がった立志伝中の人物というフレコミは、少し眉唾ものだ。いかにも善人顔をしていたら逆に怪しい。オヤジ世代は疑り深いのだ。

 だが、堤真一演じるこの主人公は真逆。パンチパーマにサングラス、眉はほとんどないし、太いゴールドネックレスのド派手なチンピラファッションだもの。そのウサンくささオーラはかなりのものだが、逆に興味が湧く。一見、柄が悪いが、実は好感が持てる人はたくさんいる。

 この島に失意の旅で訪れた尾野真千子演じるヒロインも、出会った当初は「いちばん苦手なタイプ」と毛嫌いする。だが地元の人たちから“アニキ”と呼ばれて尊敬されている彼の素顔を知って、その笑いと元気の成功哲学に引かれてゆく。

 関西弁でまくしたてる堤真一(兵庫県出身)のアクの強いキャラクターが、映画を引っ張る。最近でも宝くじのCMで真木よう子との珍妙なやり取りが笑わせてくれたが、ここでも尾野真千子相手に繰り広げる丁々発止がおかしい。尾野も“関西ネイティブ”なので、負けずにボケ・ツッコミで、おバカをやるあたりは、コメディエンヌの素質ありと見たね。

 原案はサクセスハウツー本としても大ヒットしたクロイワ・ショウの「出稼げば大富豪」。実在する“アニキ”も見た目はイカツイが、実に好人物だそうだ。名セリフの多くも彼の格言を参考にしたとか。「人生はドラクエや」「失敗した時こそ、笑え」など、コテコテだけど一理ある。

 後半は、愛するバリの人々のために商売抜きの大プロジェクトを立ち上げたアニキたちの奔走、挫折、再起を描く。南の島で“涙と感動”というより、あくまで“笑いと元気”に徹しているせいか、不思議と嫌みがない。堤と尾野の“掛け合い漫才”が絶妙だからか。それとも今時珍しい、暑苦しいぐらい濃すぎる人間関係が心地よいからか。

 監督・李闘士男は、プロレスラーが主人公の「お父さんのバックドロップ」などホットな人間像を描くのを得意とする。今回はハイテンションな南の島の大富豪か。なるほどね。

 これでお色気があるといいのだが、助演の菜々緒がみごとなビキニで脚線美を披露してくれる程度。脚フェチの僕は目の保養になった。

 新春早々“開運・初笑い”映画として縁起がイイぞ。

次回は前田有一氏です

◆プロフィール 秋本鉄次(あきもと・てつじ) 1952年生まれ、山口県出身。映画評論家。「キネマ旬報」などで映画コラムを連載中。著書に「やっぱり!映画は“女優”で見る!」(近代映画社刊)など。

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