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新日本プロレスVS全日本プロレス<仁義なき50年闘争史>「東京ドームで新日本&全日本35周年大会実現」

 新日本プロレスは2005年11月14日に、ゲームソフトの開発・販売を手掛ける株式会社ユークスに買収されて同社の子会社となり、会社の体制が大きく変わったが、武藤敬司率いる全日本プロレスにとっても05年は変革期だった。

 武藤は02年2月に全日本の社長になることを前提に青木謙治管理部長、マッチメーク委員会委員長の渡辺秀幸(ソフト事業部)、武田有弘(情報システム部=現サイバーファイト取締役)、神谷明徳(営業部=現・新日本広報)、矢部崇寛(デザイナー)の5人を連れて移籍。アントニオ猪木が「新日本の心臓部がぶち抜かれた」と激怒したのは有名な話だが、05年11月の時点で全員が全日本を去っていた。

 02年9月30日に発表された武藤体制の取締役には天龍源一郎、川田利明、渕正信、和田京平、ジャイアント馬場時代から広報を務めていた三橋祐輔、営業部長の高橋英樹、そして武藤が連れてきた青木、渡辺が名を連ねたが、05年11月の時点で取締役として残っていたのは渕と和田だけ。天龍は「自分がいたら武藤もやりにくいだろうから」と取締役就任を辞退、川田は04年4月に辞任していたのだ。

 06年1月15日には退社した高橋と青木が後楽園ホールで11月に退団した宮本和志をエースにキングスロードを旗揚げしている。

「ぶっちゃけた話、もともとの全日本の人間もいなくなったからね。社長になった当初は〝全部抱えて、どうにかしてやろうかな〟なんて意気込みばっかりあったけど、結果的には考え方も違えば、条件も違うわけだから、これは無理なんですよ。何がきついって、入れるのは簡単だけど、切るのはきついからね。これは組織として、かなりエネルギーを使いましたよ」とは、当時の武藤の言葉だ。

 06年1月23日にホテルグランドパレスで社長就任3周年パーティーを開いて新体制を打ち出した、武藤・全日本は様々な企業との連携を打ち出して、6月に株式会社サンリオとキャラクタービジネス、パブリシティ展開で業務提携。

 ハローキティとのコラボTシャツは大きな話題となり、様々な企業が出資してくれるようになったのだからキティちゃん効果は絶大だった。

 さて、リング上に目を向けるとユークス体制になった新日本と、新体制になった全日本の関係は以前よりも密になった。なぜならユークスと全日本は、ユークスが新日本を買収する以前の04年9月に全日本のオフィシャルDVD、ゲームソフトの開発・販売に関して業務提携していたからだ。

 8月の新日本の「G1クライマックス」には小島聡が5年ぶりに出場。決勝は天山広吉と小島のテンコジ対決となり、天山が3度目の優勝を果たした。

 11月15日には東京ドームで新日本のサイモン・ケリー猪木社長、ユークスの谷口行規社長が翌07年1月4日の東京ドーム大会について記者会見を行ったが、ここにサプライズとして武藤が登場して全日本が全面協力することを表明。〝新日本プロレス・全日本プロレス創立35周年記念〟と銘打たれることになった。

 当時の新日本はユークス新体制でようやく暗黒期から脱してはいたものの、まだ東京ドームを手掛ける体力はなく「07年の1.4東京ドームは開催されないだろう」と囁かれていただけに、全日本との協力体制による開催は起死回生の策と言ってもいい。

 こうした友好ムードの中で全日本の暮れの一大行事「世界最強タッグ決定リーグ戦」に天山が出場してテンコジが復活。テンコジは武藤&川田利明に勝って優勝決定戦に勝ち上がり、諏訪魔&ロージーを撃破して優勝。東京ドームでは武藤&蝶野正洋VSテンコジのスーパードリーム・タッグマッチが組まれた。

 このタッグマッチの前には、棚橋弘至が全日本の太陽ケアをハイフライフローで退けてIWGP王座防衛。全日本の三冠戦は、王者に君臨するフリーの鈴木みのるが永田裕志をスリーパーで絞め落として防衛した。

 そしてファイナルのスーパードリーム・タッグマッチはカード決定の段階から武藤が「偶然かどうか、ノアの三沢(光晴)社長もベルト(GHCヘビー級)を獲ったし、改めて三銃士&四天王時代をアピールするよ」と言えば、蝶野も「天山と小島‥‥お前ら、顔じゃねぇよ。奴らに三銃士を見せつけてやる」と世代闘争モードに突入。

 そして試合は05年7月11日に急逝した三銃士の同志・橋本真也が降臨したかのように、武藤と蝶野が袈裟斬りチョップを乱打。最後はシャイニング・ウィザードとケンカキックの合体から蝶野が天山にクロス式STF、武藤は小島に足4の字を決めるという最高のハッピーエンドになった。

 武藤と蝶野が橋本のトレードマークの白い鉢巻を巻くと同時に橋本のテーマ曲「爆勝宣言」が流れ、ステージで天を指差すとビジョンに橋本の姿が。新日本も全日本も会社組織として立て直しに成功したが、まだ三銃士の力が必要だった。

小佐野景浩(おさの・かげひろ)元「週刊ゴング編集長」として数多くの団体・選手を取材・執筆。テレビなどコメンテーターとしても活躍。著書に「プロレス秘史」(徳間書店)がある。

写真・ 山内猛

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