一瞬、中日が逆転したかに思えたその直後、神宮球場を騒然とさせた「幻の逆転弾」。5月27日のナイトゲームの8回一死一塁、川越誠司はヤクルト・矢崎拓也の初球フォークを完璧に捉えた大飛球を、右翼ポール際に放った。
ボールはポールを巻いてスタンドへ飛び込んだかに見えたが、一塁塁審の判定は「ファウル」。中日の井上一樹監督が即座にリクエストを要求したものの、映像では「ポールを巻いた」と断言できる決定的なアングルの「証拠」が得られず、判定は覆らなかった。
テレビ中継の一塁側映像では明確にポールを越えているように見えたため「完全な誤審」「間違いなくホームラン」との指摘が。川越は試合後に「自分でも巻いていると思ったので、大きなショックを受けた」と肩を落とした。
試合を解説していた野球評論家の里崎智也氏は、
「一塁側カメラでボールがポールに隠れる時点で、物理的にポールの内側を通っているはずなのに、カメラの台数とアングルが足りない」
そう私見を述べて、現状の映像環境の脆弱さを強調したのだった。
こうした「疑惑の判定」はもちろん、今回が初めてではない。例えば昨年6月2日の、日本ハム×DeNA戦。日本ハム・水谷瞬の大飛球は左中間フェンスに跳ね返って、グラウンドに戻った。エスコンフィールドの球場ルールではホームランだが、フェンス直撃の判定で二塁打に。
さらに7月30日の日本ハム×オリックス戦では、オリックスの森友哉が放った大飛球を見て、解説者と観客の誰もがファウルを確信したが、リプレー検証後の審判団の判定は本塁打。カメラには苦笑いする森の様子が映っていた。日本ハムはこれをきっかけに、エスコンフィールドにホームランセンサー導入と、ポール際カメラ増設の検討に入っている。
野球は審判団のジャッジが全てとはいえ、接戦では一球一打が勝敗を大きく左右する。再発防止のためには、多角的な映像解析と最新テクノロジーの融合が不可欠になる。中日はNPBに意見書を出す方向で調整している。
(ケン高田)