プロ野球オールスターゲームのファン投票中間発表で、思わぬ事態が発生した。今年は7月23日と24日に京セラドーム大阪と横浜スタジアムで開催されるが、セ・リーグ外野手部門で「ノミネート外」の中日・上林誠知が9万6490票を集め、上位に食い込んでいるのだ。
中間発表(5月29日)によると、外野手部門では阪神・森下翔太、近本光司に続き、上林が堂々の3位にランクイン。球団からノミネートされた岡林勇希、細川成也、オルランド・カリステら有力候補を抑えてのこの事実は、ファンの熱い支持がそのまま結果に結びついた証と言える。
上林は2013年ドラフト4位でソフトバンクに入団した。2017年にはファン投票でオールスターに初選出されたものの、2019年4月の死球による右手骨折など故障続きで、思うような成績を残せず、2023年オフに戦力外通告を受ける厳しい現実に直面した。
しかし、そこからが「再起」の始まりだった。中日に移籍した昨年は46試合に出場して打率1割9分1厘、1本塁打、3打点と数字は振るわなかったものの、積極的なスイングや守備範囲の広さで評価を高めた。
そして今季、47試合で打率2割5分6厘、6本塁打、21打点、OPS.722というキャリアハイ級の数字をマーク(5月29日終了時点)。5月に入ってからは勝負強い一打が際立ち、「数字以上の存在感」を放っている。
球宴ファン投票では通常、公式ノミネート選手が上位を独占するが、上林の躍進は異例中の異例。ファンの「生の声」がそのまま結果に結びついたことで、「スターに求められるのは単なる知名度ではない」といった反響が広がっている。2023年にも阪神の村上頌樹がノミネート外から投票トップで選出された例はあるが、外野手部門でのランクインはさらに希少だ。
上林がこのまま票を伸ばし、二度目の球宴の舞台に立つことができるか。戦力外から這い上がった29歳の再起劇を見守りたい。
(ケン高田)