任天堂のゲーム機「Nintendo Switch 2(ニンテンドースイッチ2)」が発売開始1週間で販売台数350万を超えたそうだが、なかなかピンとこない。備蓄米同様、買えた人が周りにいないからだ。
アメリカ版は抽選なしで買えるが、本体(449.99ドル)とジョイコントローラー(94.99ドル)、専用ソフトの「マリオカートワールド」(79.99ドル)を買い揃えると約10万円もかかる。日本版の本体価格は破格の4万4980円(税込)だが「Nintendo Switch Online」に累積1年以上の加入期間がある、などの応募資格を満たした上での抽選販売になっている。
こんな複雑な販売方法になったのは、話題の商品を買い占め、高値で転売する「転売ヤー」のせいだ。
この転売ヤーに、任天堂が強烈な「ヒップドロップ」を決めた。「スイッチ2」の修理サービス規程と保証規程を読むと、ゲーム機器を落として画面が割れる、ジョイスティックが壊れる、バッテリーが経年劣化する…などの修理が必要になった際、購入時の「納品書」「購入証明書」の同封を求めるという。
「納品書」には購入者の名前、住所、電話番号、メールアドレス、ID、注文番号などの個人情報が明記されている。これらの同封がない場合、ゲーム機にシリアルナンバーラベルや定格表示ラベルなどが貼られていない場合は、アフターサービスを受けられない。
転売ヤーから買う方も悪いのだが、「メルカリ」や楽天のフリマサイトでは、個人情報部分を切り取った納品書なら送れると回答し、購入希望者や他のサイト利用者から、怒りのコメントが殺到している転売ヤーがいる。
個人情報ダダ漏れを恐れる転売ヤーの存在があるゆえ、「メルカリ」や楽天のフリマサイトに10万円超で出品されていた「スイッチ2」は、販売開始1週間で5万円台にまで暴落。本体価格、販売手数料、送料、梱包材コストを考慮すると、儲けは3000円ほど。抽選販売の応募資格である「Nintendo Switch Online」1年分3600円を差し引いたら、実質赤字だ。
5月にマクドナルドが販売した「ちいかわ」「マインクラフト」オモチャ付きハッピーセットは、初日の朝から転売ヤーが買い漁り、店内やゴミ箱にはハンバーガーやドリンクが手つかずのまま捨てられるなどして、3日で完売。第3弾は販売中止となった。
ハンバーガーが捨てられても儲かればいいマクドナルドと、儲けは少なくとも企業のプライドをかけて転売を阻止する任天堂。ここまで違う「転売ヤー対策」には企業の「ものづくり」の情熱と、不正を許さない社会正義、顧客への愛が反映されているのかもしれない。
(那須優子)