「大谷翔平の力からしたら、今日は50%だと思う」
野球評論家の高木豊氏は、663日ぶりに「投手」としてメジャー登板となった、ドジャース・大谷翔平をそう評した。この「50%評価」は、球速こそ最速161キロをマークしたものの、変化球の切れや実戦感覚はまだ本調子に遠いという、冷静かつ厳しめのものだった。
28球を投じて2安打1失点、さらに暴投を1つ記録した投球内容について高木氏は、大きな破綻こそなかったものの、制球力や力の配分は「まだ戻っていない」とした。その上で、腕の振りやリリースポイントに以前とは微妙なズレが見られ、実戦でしか得られない感覚を取り戻すには、数試合の登板が必要であると指摘した。
熱狂的なファンはこの評価に納得がいかない様子だが、高木氏は、
「また二刀流が見られる。これからどのように期待に応えてくれるか、楽しみ」
と前向きに語っている。
デーブ・ロバーツ監督は当初、オールスター後の本格起用を予定していたが、実戦での疲労度を早期に把握すべく「1イニング限定登板」を急きょ、決断。大谷本人も「実戦でしか得られない感覚がある」と語り、登板後は肘や体調のダメージを翌日以降も綿密にチェックする意向を示した。
MLB公式サイトは「待望のマウンドで100マイルを計測した」と速報し、AP通信も「大谷がマウンドにいるだけで、投手陣を大きく支える存在になる」。日本では特別編成でテレビ中継が組まれ、期待と興奮がそのまま伝えられた。
復帰前の最後の登板は、エンゼルス時代の2023年8月23日。速球の威力は衰えず、変化球の精度は段階的に上向きになっている。高木氏の「50%評価」は決してネガティブなものではなく、むしろ大舞台での実戦経験が増すごとに真価を発揮する大谷への、期待を込めたものと言えるだろう。
(ケン高田)