血液をよくすることが、自堕落な日々を過ごしてきた中高年のその後の人生を救う。それに気づかせてくれるのが、渡邊氏の新刊「世界一の心臓血管外科医が教える善玉血液のつくり方」(あさ出版)だ。
ボロボロ血管が心臓や脳、その他の臓器にどんな悪影響をもたらすのかなど、恐ろしくなるほどわかりやすく書かれている。劣化した血管は今さらどうにもならないので、本書の中の「善玉血液」に注視しよう。まずは血液が「善玉」か否かを把握する、渡邊氏によるチェックシート(ページ下部参照)だ。
「該当項目が3つ以下なら善玉血液の可能性大。5つ以上だと、かなりヤバい悪玉血液があなたの体を流れています。ただ、善玉血液が流れるようになれば、血管が劣化する速度をゆるやかにすることはできます。血管に突然起きるトラブルを回避するには、まずはそれで十分」(渡邊氏)
血液を「善玉」に変えることを心がけるだけで、最悪の事態を避けられる可能性があるのか。善玉血液はどう手に入れればいい?
「食事と運動の改善を言われるものですが、運動習慣のない人がいきなり運動をするのはハードルが高い。私もほとんど運動しないので、ウォーキングだって無理ですよ。誰でも取り組めるのは、食事の改善。悪玉血液にならない食べ方を覚えて習慣化することです」
渡邊氏によれば、善玉血液をつくるには血管をボロボロにした原因物質を避けること。注意すべき「4つの白い粉」がこれらだ。
砂糖/小麦粉/塩/プロテイン
まずは「砂糖」。ケーキや大福、すべてのスイーツに含まれ、甘みこそ旨みと思いがちな多くの人には一番の罠かもしれない。砂糖は吸収の速度が速く、血糖値の急上昇をもたらし、血管にダメージを与える。食後の血糖値が上がるのは普通だが、食事から2時間過ぎても血糖値が高ければ「食後高血糖」とされ、肥満や糖尿病、深刻な場合はすい臓を疲弊させるのだ。
「血糖値が急上昇すれば、すい臓は慌ててブドウ糖を細胞に取り込むために働く『インスリン』を大量に分泌します。繰り返せば、すい臓はどんどん疲れていきます」(渡邊氏)
渡邊氏によれば、日本人の糖尿病の原因には、すい臓の機能低下があるそうだ。砂糖の甘さを喜んでいるうちに、気がつけば血管ボロボロ、糖尿病になってしまうとは恐ろしすぎる。
次に「小麦粉」。パン、うどん、ラーメン、天ぷら、カレーのルウのとろみも小麦粉だ。朝食がパンなら、1日3食すべて小麦粉を食べていると言ってもいい。小麦粉と言っても、注意すべきは、小麦の外皮や胚芽も混じる「全粒粉」でなく、機械的に生成された白い「精製小麦粉」のほう。渡邊氏が警鐘を鳴らす。
「小麦粉の主成分は炭水化物で、これは糖質と食物繊維で構成されています。食物繊維は糖質の吸収をゆるやかにするので一緒に摂るといいのですが、白い精製小麦粉は食物繊維が含まれる外皮や胚芽をわざわざ取り除いてしまっている。だから、糖質の吸収が速くなって、血糖値が急上昇しやすくなる。主食として摂ることが多いので、むしろ砂糖以上に注意が必要です」
続いて「塩」。実は塩そのものが血管に悪さをするというのではなく、塩に含まれるナトリウム(塩分)に問題があるそうだ。塩分の摂りすぎ→高血圧→血管はダメージを受ける。
「『体にいい塩と悪い塩がある』と言う人もいますが、どんな塩も主成分がナトリウムであることに変わりはなく、血管に与える影響は同じです」(渡邊氏)
とかく日本人は塩分摂りすぎな民族だ。日本高血圧学会高血圧治療ガイドラインで推奨される塩分量は1日6グラム未満に対し、日本人は約10グラム。ラーメンの塩分は1杯約7グラムなので、これだけで規定量オーバーだ。
最後に「プロテイン」。ボディビルダーに愛好者が多いが、最近では女性もサプリとして摂取し、ユーザーは増加傾向にある。渡邊氏がこう指摘する。
「プロテインは原料からたんぱく質だけを抽出して粉末化したものです。たんぱく質だけを効率よく摂取するには適したサプリなのですが、腎臓の機能を低下させる危険があるのです」
たんぱく質は摂取後、分解されてアミノ酸になり、余ったアミノ酸は肝臓で分解されてアンモニアを発生。アンモニアは有毒なので肝臓で尿素に変換され、尿素は腎臓でろ過されて尿として排泄される。プロテインは食物から摂取するより分解のスピードが速い。短時間でのろ過作業は腎臓に負担がかかるという。
「余分な塩分の排出ができないと血圧が上がり、腎臓の血管がダメージを受け、さらに腎機能が低下するという悪循環を繰り返すことになります」
■あなたの血液は「善玉」か「悪玉」か?
・階段を上がると息が切れる
・急に胸がドキドキする、脈が早くなるときがある
・揚げ物や菓子パンが好きでよく食べる
・筋トレにはプロテインパウダーが必需品だ
・ダイエットで体重が落ちにくくなってきた
・1日にあまり水分を摂らない
・お酒を飲むときには必ずおつまみも食べる
・食後に眠気やだるさを感じる
・普段から体を動かす機会が少ない
・些細なことでイライラしたり、ストレスを感じたりしやすい
5つ以上当てはまる人は超BAD!/3つ以下であればOK!