「猫の楽園」と称されるトルコでは公園やモスクに限らず、街の至る所で野良猫の姿を見かける。人々は皆、野良猫に話しかけたり撫でたりと、その光景を見ているだけでも、トルコの人々がいかに猫と共生しているかが窺い知れる。
トルコでは親のいない子猫を見つけて面倒をみたり、病気の猫がいたら薬を買って、動物病院に連れて行くことは、ごくごく普通のこと。野良猫を無料で診察するボランティアの獣医師も多い。
そんなことから野良猫たちは人慣れしていて、怖がらずに自ら人間に近づき、スリスリするのは日常的に見られる風景だ。
そんなトルコで今、SNS上を賑わせているのが「わが最も可愛い患者の保護者」とのタイトルで投稿された、とある野良の母猫と子猫の映像だ。
6月9日、トルコの動物病院の公式インスタグラムにアップされたものだが、そこには子猫を口にくわえて動物病院を訪れる母猫の姿が映っていた。
獣医が検査してみると、子猫の目は菌に感染した状態だった。幸いにして症状はそれほどひどくなかったため、手当てを施し、治療を終えた子猫を母親のもとへ。
母猫は病院の入り口から一歩も中へとは入らず、治療が終わるまで座って待っていた。そして子猫の無事を確認すると再び口にくわえ、病院裏の空き地に戻っていったという。
この一部始終を捉えた動画はたちまち拡散していった結果、アメリカの動物メディア「DDD」から取材依頼が。病院関係者は次のように答えたのだった。
「母猫から治療費を取ることはできませんが、うちの病院の職員たちは、その小さな家族を助けることに大きなやりがいを感じたのでしょうね。獣医学というのは、憐れむ気持ちが必要な職業。我々は野良猫であれペットであれ、全ての動物を助けることに最善を尽くしています」
母猫が動物病院をちゃんと把握していることもまた、いかに人間と猫が密接な関係で共生しているかを示すものだといえよう。
(灯倫太郎)