猫が夜な夜な、街中の空き地や駐車場に集まって会議をする。「猫会議」って本当か。都市伝説に決まっていると話す向きもあるようだが、猫の研究者や獣医は、野良猫たちが夜中に何匹か集まるのを目撃し、解説しているほど。やはり「猫会議」は存在する。
もっとも、野良猫が多い田舎や猫の島などと違って、都会では野良猫を保護する人が増えているので、猫会議を見かける機会は減っているに違いないのだが。
「猫の会議(集会)」とネット検索すると、研究者や獣医が集まって猫について研究発表する場があるようで、そちらがヒットするのがちょっとおかしいが、いずれにしても猫会議は行われているようだ。
我が家のガトー、クールボーイ、そうせきはどうだろうか。2匹でいることはあっても、3匹が揃っていることはあまりない。3匹とも昼間は居場所が決まっている。ガトーは仕事部屋のベッドか1階の畳の部屋など、クールボーイは寝室の押入の上段のさらに上のスペース、そうせきは仕事部屋周辺か、雲隠れしてわからないことが多い。ご飯の時だけは例外で、スリーショットを撮れるのはここだけといっていいほどだ。
それでも家猫の3匹は、猫会議だけは飼い主にわからないように定期的にやっている。こちらがその場に遭遇すると、こちらは見てはいけないものを見た、猫たちは見られてはいけないものを見られたと、お互いに気まずい雰囲気になる。
集まる時間帯は野良猫と同様、夜中と決まっている。0時から2時くらいにかけてが多い。場所は1階のリビング隣りの部屋や和室、玄関など。夜中に2階から降りていくと、3匹が何気にこちらに視線を向ける。香箱座りのことが多く、つまりリラックスしている。気まずいながらも、驚いているという風ではなく、「あれっ?」というちょっと不思議な感じだ。末弟そうせきは自己主張が激しく、時に猫語を話しているのかと思うほど、訴えるように声音が変わることがあるが、猫会議の時はおとなしい。
我が家の猫会議の面白いところは、3匹とも重ならないようにほぼ等距離、三角形に近い位置関係で佇んでいること。この時は対等な関係なのだろうか。
気になるのは会議のテーマだ。調べてみると、野良猫の主要テーマは縄張り、つまりテリトリー、序列を確認することらしい。お互いの領域を侵略しない、侵略する場合はお互いに納得の上で行う、勝手に侵略したらその場で制裁するために喧嘩を吹っ掛ける。夜中に空き地で猫がギャーギャー騒いでいたら、縄張り争いだと思って間違いない。
では家猫の場合は何について会議、話し合いをするのか。野良猫にとって死活問題となるテリトリーは議題にのぼらないだろうから、やはりご飯についてではないか。それから、飼い主への不満とか。
概ねこんなことではないかと推測してみる。例えばご飯については、
ガトー「最近さ、朝の缶詰のごはん、遅くない?」
以前は未明の3時、4時が朝ご飯タイムだったが、早過ぎて大変なのと、腹ペコ前の状態で食べ残しが多く、ギャーギャー騒ぎ出すまで待つようにしているのだが…。
クールボーイ「そう、前より2時間くらい遅い気がする。オレ、もう腹へっちゃってさ」
そうせき「ボクはパパさんのところで寝てるから、いつ起きるのか、チラチラ見張ってんだけど」
クールボーイ「お前、仲がいいんだから『起きろ』って言えないの?」
そうせき「人に頼まないで、自分で言えばいいじゃないか」
クールボーイ「お前が言えよ」
ガトー「まあまあ、パパさんだっていろいろ大変みたいだから、少しは我慢しなよ。それよりも、最近、オレに『ちゅ~る』をあまりくれないんだよ」
そうせき「お兄ちゃんは食べ過ぎじゃない? 食べるから太るんだよ」
クールボーイ「そういえばお前、あまり『ちゅ~る』食べないね。オレは1日1本と決めてる。不満なのは、おねだりしないとくれないこと。それに、好きじゃない『ちゅ~る』のことも多くてさ。スルーしちゃう」
我が家の3匹の「猫会議」はこんなものではないか。なんとも平和な猫たちである。
(峯田淳/コラムニスト)