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記事全文を読む→勝新太郎が苦悩の表情で30秒間沈黙した「世界のクロサワ映画」降板トラブル/壮絶「芸能スキャンダル記者会見」秘史
「座頭市」などで知られる昭和の名優、勝新太郎が亡くなってから、今年6月で28年の月日が流れた。そんな勝の歴史に残る迷言といえば、1990年の大麻疑惑の際に発した「もうパンツははかない」など数々あるが、中にひとつだけ、芸能マスコミには饒舌だった彼が苦悩の表情を浮かべ、30秒以上も沈黙してしまった記者会見がある。
それが1979年7月19日午後8時、定宿だった東京プリンスホテルで行われたものだ。
当時、勝は「世界のクロサワ」こと黒澤明監督がメガホンを執る戦国時代劇「影武者」の主演に抜擢され、前々日の7月17日からリハーサルに臨んでいた。
ところが2日目となったこの日、勝はリハーサル中の自分の演技を収めるべく、スタジオにカメラを持ち込もうとした。すると黒澤監督が、
「役者がそういうものを見たからって、考え込まれては困る。(あなたの演技は)僕が見ているからいいじゃない」
ところがその言い方が気に食わなかったのか、
「そっちが世界のクロサワなら、俺も天下の勝新太郎だ」
スタジオを出た勝は自身のワゴンカーに閉じこもり、着ていた鎧、さらにはカツラまで取ってしまったのである。
結局、この日の撮影は中断。ただ、勝とて、そこは分別のある大人だ。翌日には冷静さを取り戻して「大人げなかった」と黒澤監督に謝罪するつもり…だった。
ところがこの騒動がスポーツ紙で大々的に報じられたことで、鎮火しそうな火の勢いが拡大。完全主義者といわれ、撮影中はどんな不協和音も許さない黒澤監督だ。7月19日午後6時、東宝スタジオに集まった報道陣に対し、
「監督と俳優の関係はデリケートで、嫌なことがあってうまくいくはずがない。彼には降りてもらうことにした」
なんと、勝の降板を宣言したのである。
これを受けて行ったのが、冒頭で触れた会見だったわけだが、勝にとってはまさに青天の霹靂。なかなか思うように言葉が出てこない。
「黒澤さんも若いよね。なにも俺と五分で対立する必要ないじゃないか」
絞り出すようにそう語ると、記者から「勝さんは、もう『影武者』に未練はないんですか」と聞かれて30秒間、沈黙。
その苦悩の表情には「ギャラはいらない」とまで言い切ってこの作品に臨んだ、言葉では決して言い表せないであろう思いが詰まっているようだった。
その後、「影武者」は仲代達也が代役を務める形で映画化されたが、評価は賛否両論。できれば勝新版の「影武者」も見てみたかった…そう思った人は多いのではないか。
(山川敦司)
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