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記事全文を読む→佐藤誠「取調室の裏側」〈取調室を舞台にした人気ドラマ。プロが感じた「違和感」の正体〉
人気ドラマの劇場版「緊急取調室 THE FINAL」が公開され、シリーズ完結を迎えた。主演の天海祐希が元SIT(特殊班捜査係)の真壁有希子を演じ、一課の取り調べ専門チーム「緊急事案対応取調班(通称キントリ)」のメンバーと、可視化された特別取調室でホシと対峙し、事件解決を目指す物語だ。
普段、スポットライトを浴びない取調室が舞台となり、取調官の仕事には“技術”と“人間学”が必要なことを世に伝えてくれた、価値のあるドラマだった。
プロでも見入ってしまうストーリー展開だが、実際の現場とはかなり乖離している。そもそも警視庁にキントリと同じ部署は存在せず、SITから取調官に配属されることもない。
また取調官は一課の各係に一人だけ。それぞれ磨き上げた自己流の取り調べ術がある。他の取調官がどんな方法で被疑者と向き合っているのか。お互い種明かしすることはない。
真壁流の取り調べを見ても、毎回一筋縄ではいかない被疑者と心理戦を繰り広げ、天才的なひらめきで突破口を切り開いている。よく勘違いされるのだが、現実の取調室では、取調官が事件の真相を暴くことなどない。
取り調べとは、証拠が“主”で、供述は“従”になる。防犯カメラの映像やスマホの履歴は事件とどのような関係があり、どんな意味を持つのか――刑事が集めた証拠と照らし合わせ、ホシの供述がズレていないのかを確かめて整理するのが取調官の役割だ。
高度経済成長期あたりの取り調べでは、ドラマのように供述が“主”になり、最大の武器にもなっていた。証拠集めがないがしろにされて、冤罪の疑いがかけられた事件が多かったのはそのためだ。「私がやりました」と供述のみで完落ちさせても、裁判で否定されては意味がない。
俺の“戦場”だった取調室の様子も、被疑者との駆け引きは展開されるが、キントリで見られた息を飲むような緊迫感とは違う。
事件について話したくなければ、無理に口を開かせる必要はないと思っていたので、俺の場合は雑談が9割。そのため、普段から「東京スポーツ」や「週刊アサヒ芸能」を愛読。競馬やパチンコなどのギャンブル、風俗や芸能ゴシップの猥雑な話まで、ホシの好きそうな俗っぽい世界を網羅。趣味が合えば話は弾むもの。取り調べのネタに何度も活用させてもらった。
取調室では、取調官の核心をついた一言でホシが泣き崩れ、罪悪感で土下座することはない。“完落ち”は静けさの中で訪れる。他愛のない雑談の最中に、
「佐藤さん、あの日は雨が降っていたんだよ」
と、おもむろに事件について語り出し、本人しか知らない事実の告白が行われる。取調官しか直面できないドラマチックな瞬間だ。静謐で派手さはないのでドラマにはならないが‥‥。
佐藤誠(さとう・まこと)警視庁捜査一課殺人犯捜査第一係、通称「サツイチ」の元取調官。1983年、警視庁入庁。2004年に捜査一課に配属。『伝説の落とし屋』と呼ばれる。「木原事件」で木原誠二氏の妻・X子さんの取調べを担当。2022年に退官。
佐藤誠の相談室
https://satomakoto.jp/
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