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記事全文を読む→気になる著者に直撃!〈山極壽一〉高齢のゴリラは群れの守り役!老人は若者に尊敬される生き方を
「ゴリラの森で考える」
毎日新聞出版/1870円
情報通信革命によりSNSの利用が急速に拡大し、AIも飛躍的な進化を遂げている中で、人類の未来はどうなるのか。ゴリラ研究の第一人者で、霊長類学者として世界的にも名高い、総合地球環境学研究所所長の山極壽一氏が、ゴリラから学んだ生きる術を指南する。
20代で野生ゴリラの生態を観察するためアフリカに渡航。以来、ゴリラとのつきあいは40年以上にも及ぶ山極氏は、情報化社会に対してこう懸念を示す。
「SNSが登場したことで多くの情報が共有でき、民主主義的な合意を得やすい世界になると思っていました。ところが現実は、みんな自分の知りたい情報ばかりを集め、その情報を共有できる小さなグループに閉じこもってしまうという逆の結果になってしまった。しかも、常に誹謗中傷の言葉が飛び交い、危険が渦巻く。そうした多くの不安の中で生きていると、人類は進化や歴史のどこかで進む道を間違えたと感じます。そこで、なじみ深いゴリラを通して、人間の本質や間違いに迫ってみようと本書を書きました」
ゴリラが胸を叩く「ドラミング」は、長らく「威嚇」の表現とされてきた。だが実は「自己主張」や「好奇心」を表す人間の会話に近いコミュニケーションの1つだったことが判明したのだ。
「地球上に約450種いる霊長類の中で、人間に最も近いのがゴリラです。彼らは人間より温和で争いのない暮らしを望みますから、人間の祖先も穏やかに暮らしていたはずです。人間が直立二足歩行を始めてからは、発声しながら手を叩き、足を踏み鳴らして仲間たちと踊るという音楽的なコミュニケーションで共感力を高め、社会力を強めてきたと確信しています」
このコミュニケーションの分野は、今後ビジネスでも注目されていくという。
「例えば旅行、音楽コンサート、スポーツ観戦に行くことは何かを所有するのではなく、参加するためにお金を払うわけです。これからは、人の集まりを作るビジネス、いわゆる『社交』がキーワードになっていくと思います」
昨年は東北をはじめ、各地で野生のクマに住民らが襲われるケースが続出した。これも「クマとのコミュニケーション方法を間違えなければ、解決できる」と提言する。
「私は屋久島で猿を調査していましたが、人が襲われることはありませんでした。ただ、何かの手違いでエサをあげると人に危害を加えるようになったんです。人を見たらエサがもらえると思って近づきますが、もらえないので襲う。それはクマも同じです。絶対にエサを与えなければ、人間と必ず共存できます」
最後にゴリラから学ぶ生きる術について語る。
「高齢のオスは体力こそ衰えているけれど、群れから追い出されることはないので1人ぼっちになりません。孫世代の子供たちと遊んだり、見守ったりする役割を果たしているのです。なので老人は、若者たちにうらやましがられるような生き方をしないといけないと思います。自分は一歩引いて、周りの人々に配慮しながら、若者に尊敬される生き方をするということです。まだまだ楽しみや喜びが人生で見つけられるはずです」
〈黒川壱郎〉
山極壽一(やまぎわ・じゅいち)1952年東京都生まれ。霊長類学者、人類学者。総合地球環境学研究所所長。京都大学理学部卒、同大学院理学研究科博士後期課程単位取得退学。理学博士。83年に財団法人日本モンキーセンターリサーチフェロー、京都大学霊長類研究所助手、京都大学大学院理学研究科教授、京都大学総長などを経て21年4月より現職。
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